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2018/10/28(日)
母の泣き笑い
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教科書との格闘の日々はテレビ画面に釘付けになる自分との格闘の日々でもあった。そこで、深夜の1〜2時間しか受験勉強の時間がとれない。つまり、寝るのは3時、起きるのは6時過ぎという日々であった。しかし、どうしても時間がとれない自分を時としてしかりながら、基本は自分を許しているわたしがいた。そしてもう一つ、教科書を読む時、机にじっと座って鉛筆を持ってノートに書いて勉強するという習慣がない自分がいた。教科書を読みながらウロウロ、ウロウロとうろつきまわる。しかも、1〜2時間の間、弟や母が起きないように気を使いながら歩くのだが、弟はともかく母は眠れなかったに違いない。それでも母は気づかないふりをしてくれていた。そしてまた、時には夜食にうどんを作ってくれたりもした。こうして、とうとう入試テストの日となった。わたしはテストの内容をまったく覚えていなかった。「あ〜あ、済んだ!」と思っただけであった。テストを受けたら後はもうすることがない。テレビを見ることと寝ることが仕事であった。まったくよく寝た。そしてとうとう発表の日となった。昼前頃であったか、操山高校まで自転車で見に行った。なぜ昼前まで見に行かなかったのか。岡輝中の先生が言うとおり、まず無理だろうという気持ちがそうさせていた。その理由は、わたしは岡輝中の県立普通課受験生枠の20番以内に一度も入ったことが無かったからであった。でも、見に行かなければならない。そこで昼前までうじうじとしていたのであったが、行って見ると、なんと受かっていた。内心「おお、やった!」と喜びながら、自転車を漕いで家に帰っていると、なんだか気が抜けてきたようだ。帰ってから、そんな自分を見て母が泣きだした。「どうして?」と思いながら、母に「受かっていたよ」と言うと、今度は母は泣きながら笑い出した。気が抜けたわたしを見て母は受験失敗と思ったそうだ。そして、その日の夜は祝いの膳もなく、普通の夕食を食べながら、母は目でおめでとうと言った。
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