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2018/10/12(金)
ニュートンって安井先生じゃなかったの?
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ある日のことである。国語の授業中であった。藤本先生(われわれ学生間で青びょうたんというあだ名で呼ばれていた国語の教師ー顔色が悪く青黒い顔色をしていた)がわたしの頭を叩いて怒鳴った。「タバタ!ニュートンを連れて来い!」と命じたのであった。わたしは寝ていたようで何のことかさっぱり理解出来ないでいたところ再度、雷が落ちた。「タバタ!ニュートンを連れて来い!職員室にいるはずだ」と。そこで、わたしは理解した。(ニュートンを連れてくるのだ)と。わたしは脱兎のごとくに「わかりました}と教室を飛び出した。(ニュートンだ。ニュートン。ニュートンと言えば理科の安井先生だ。そうだ!職員室にいるはずだ)と職員室へ飛び込んだ。ところが安井先生は居なかった。(藤本先生は職員室にいると言ったのにいねえじゃねえか)と、ふてくされて、{安井先生は?どこ?」と聞く。「安井先生は今授業中だ」と**先生の声。{ありがとうございました}とわたしは2階の教室へ引き返し、わたしのクラス以外の教室を見て回る。(いた!)教室のドアを開けて飛び込む。「安井先生!藤本先生が呼んでいます。すぐ来てください」「オオー?今、授業中だぞ」「そんなのいいから来てください。藤本先生が連れて来いと言いました。すぐ来てください」と無理矢理安井先生を教室から連れだしてわがクラスに連れてきた。ガラッ。戸を開けて「ニュートン先生どうぞ中へ}と先生を中へ引き入れたところ、藤本先生がポカ〜〜ンと口を開けている。(エッ){・・・・・・?」それから大笑いして「安井先生、申し訳ありません。授業中に。勘違いです。誠に申し訳ありません。授業にお戻りください」と藤本先生が平謝りに誤っているのだ。(どうしたのだ!?)まだわたしには事態が飲み込めない。安井先生が怪訝な顔つきで教室を出て行かれた。そして、藤本先生から説明があった。「安井先生は確かにニュートンほどの実力があるかも知れない理科の先生だ。しかし、俺が田畑に頼んだのはいつも俺が持っているあのニュートンだ。アレだ、あれ。あれを持ってくるのを忘れたのだ。だから、あのニュートンを持って来いと言ったのだ。田畑!わかったか!?あのニュートンだ。今日の授業はこれで終わりにしよう。みんな帰ってよろしい。田畑は後で職員室へ来るように」と言った。クラスのみんなは大喜びで教室を後にした。後で聞くと数名の者が「田畑は授業妨害をした。これでまた受験が後退した」と非難していたようだが、大半の者は授業が終わったと喜んでいた。わたしは思い出した。藤本先生は子供を叱る時に短い竹の先にいくつもの輪ゴムをま〜るく巻きつけた奴で「お前を叩くのはわたしではない。ニュートンの法則で落ちてくるのだからわたしではない」と言いながら頭を叩くあのニュートンの竹棒だったのだ。藤本先生は例のあの職員室に忘れたニュートン棒をわたしに持って来させて授業中に寝ていたわたしを叩くつもりだったのだ。(そうか。安井先生じゃなかったのだ)と思いながら、職員室へ行くと、藤本先生が例のニュートンでわたしを優しくコツンと叩いた。「安井先生によ〜く誤っておけよ}と言いながら。わたしが後で安井先生に「ごめんなさい」と謝ったことはもちろんのことであるが、田畑賢司の大失敗の巻であった。
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