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2016/02/27(土)
子規の宇宙であった小庭
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のとかさや杖ついて庭を徘徊す 子規 明治29(1896)年春の句である。彼は前年3月従軍記者として遼東に渡ったがすぐに日清戦争が終結し5月に日本に帰った。その帰船上で喀血した。その後の療養生活を経て東京に帰ったのは10月下旬であったが、腰部疼痛を起こしていた。以後歩くことが困難となり、生活の大半を病床で過ごすこととなる。この年から7年間(亡くなるまで)彼は病床にありながら文学と格闘することになる。その彼の壮絶な苦闘を支えた十坪の小庭、彼にとっての全宇宙をやっと杖をついて彼は徘徊できたのである。この句は「なんだのどかだったから杖をついて歩いたのか」という感想と「なるほど大変な思いで闘っていたのか」との感想と二つに分かれるかと思われる。その後の鶏頭の句に関わってくる句でもある。
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