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2013/05/27(月)
ドイツの労働法制改革(2)
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EUの中でドイツの債務危機後の堅調な経済運営が注目されています。但し、あまり目立たないのはEU全体の曇り空の中だからではないでしょうか。10年前には「欧州の病人」と呼ばれていたドイツが経済を甦らせた背景に労働法制の改革がありました。その全てが良かったと言うつもりはありません。学ぶべきは学べば良いと思うのです。一歩づつでも日本国民の暮らしの前進を勝ち取りたいと願うからです。当時のシュレーダー首相は労働市場を抜本改革しようと決意し、フォルクスワーゲンの労務担当役員であったぺ−ター・ハルツ氏にその改革を依頼し、「ハルツ委員会」を立ち上げ、1年間の議論・検討を経て、03年3月に「アジェンダ2010」を発表し、改革の方向性を示しました。その内容はハルツ第T法、第U法、第V法、第W法の4部構成で成り立っており、03年施行の第T及び第U法で失業者を派遣労働者として登録し、仕事を紹介する人材サービス機関の設置や個人企業の設立を通じた自立プログラム、所得税や社会保険料が部分的に免除される低賃金労働制度などがおこなわれました。翌年の04年にはハルツ第V法の施行で連邦雇用庁、雇用局(日本のハローワークに相当)を改組し、その機能を抜本的に改め、強化しました。サービスの多様化を図り、民間との競争も促し、数値目標の設定や説明責任を求めることなどを断行しました。と同時に、労働市場改革法で失業期間の大幅短縮をおこなったと言います。日本の安倍自公政権及び国や財界がこの成果を強調し始めたら危険な罠だと思ってください。日本の場合は大宣伝の裏には必ずその意図が隠されているからです。「いいなあ」と思って眺めていたら「あれ、失業期間だけが短縮されていた」なんてことになりかねないからです。さて、そして、05年にハルツ第W法が施行されました。従来の失業手当とは別に半永久的に給付していた失業扶助(失業手当がもらえない人が対象)と社会扶助(生活困窮者が対象)の一部を統合し、就労を促す動機付けを組み込んだ新しい失業給付を創設したのです。この点についても先ほどの「失業期間の短縮」と同じで安倍自公政権下で声高な宣伝が始まったら要注意です。生活保護を切り捨てるだけという結果にならないかと心配になります。意図をもたずに真剣に国民の暮らしを考えるという基本姿勢の確立がまず求められます。さて、ドイツではこうした改革を初めて10年になります。今日、これは「ドイツの奇跡」だと世界の学者が注目し、研究をおこなっているとのことです。わたしはこの改革が大きくは「自助努力の要請と惜しみない支援」「職探しの効率性向上による支援強化」「労働時間の貯蓄制度」の3つに大別されると思っています。
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