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2005/09/03(土)
暗中模索
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病弱だった私はいつも自分が家族の足かせのように思っていた。 人見知りがはげしく、唯一上位に立てるのは兄でしかなかった。 兄は優しく、父親からの厳しい躾もあったため常に妹を中心とした生活を強いられていた。私は兄の優しさを利用していつもわがままを言っていた。それでも、親が不在の夜など手を握って頼もしく傍にいてくれた。 私が登校拒否になった時も、学校や教師とを繋いでくれたのは兄だった。国語が得意で、優しく人当たりがいい兄は私にとって自慢の兄で、自分が兄の足かせになり続けていることに自分の身を呪った。 私は家族にとっての恥であり。重荷であり。足かせである。そう思った私には「この世との繋がりを絶ってしまえ」と聞こえる甘美な誘いが、その時の私にとっては家族への最高の恩返しだと思えた。けれど、今も脈々と波打つ血潮が存在する。 高校浪人をし、入学式に恐怖で動けない私に勇気付けてくれたのも兄だった。 兄を知っている人からみれば、私は出来損ないの妹で。それが悔しく、また兄に対して申し訳ない気持ちだった。存在だけで必要とされ、愛されている兄。迷惑と恥ばかりの妹。 だから、家族の恥に迷惑にならないようにと必死で知識を蓄え、努力したつもりでいた。 いつの間にか私は兄や両親を飛び越えるだけの知識を持ったのだが…しかし私は、単なるでしゃばりやウンチクを説く人間になってしまっただけなのかもしれない。 自分のずたずたになった心を守るには、私には知識を蓄えそしてつなぎ合わせた鎧を作るしかなかった。けれど、つぎはぎだらけの鎧をはずせば、今も傷ついた心は血を流し続け、幼い私が「自分を抹殺してくれ」と訴えている。その傍らには甘美な誘いをいい続ける自分がいる。 今は、明確に主人が私を必要としている事実が目に見え、聞こえてくるから私は存在できているが、甘美な囁きは果てることなくのろしを上げて私をいざなう。 そして、私を責めるのだ。お前の知識の為に、親のプライドや兄のプライドは犠牲になっているのだ。と… 私はどうしたらいいのだろうか
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