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2020/10/30(金)
詭弁について(その2 各論1 前件否定の虚偽) 第6307回
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本日の小林の健康状態ですが、平熱(36.6度)、痰無し・咳無し・味覚&嗅覚障がい無しで、鼻づまり無しです。
今日は、一切稽古無しでした。 11月中旬の哲学の勉強会のレジュメ作成の最後の追い込みをしました。
さて、タイトルの件ですが、今日は「前件否定の虚偽」です。構造は、以下の通りです。
もしPならばQである。/Pではない。/従ってQではない。
A「自分がされて嫌なことは、人にもするな(黄金律)」 B「なら自分がされて嫌でなければ、人にしても良いんだな」 注:黄金律「他人から自分にしてもらいたいと思うような行為を人に対してせよ」 という内容の倫理学的言明
Aの発言に対するBの返答は「XならばYである。故にXでなければYでない」という形式の論理です。これが「前件否定の虚偽」と呼ばれるものです。 数学でいうと「自分がされて嫌なこと」は「人にしてはいけないこと」であるための十分条件です。命題から論証なく「裏」を導き、それを用いる論証方法です。このタイプの推論は、XとYが論理的に同値の時のみ成立する為、恒真命題ではありません。(恒真命題:常に真理となる命題。トートロジー)
この形式の論証は、前提が真であっても、結論を導く推論過程に瑕疵(かし:間違い)があるのです。「前件否定」という名称は、「前件」すなわち論証の前提部分(もし ― ならば)を否定する形式であることに由来しています。 「逆もまた真なり」という真理を建前にして逆と裏を意図的に混用することで相手の誤認を誘い、本来は偽である命題を真なるものと強引に主張する手法なのです。
この論証形式が妥当でないことを示すには、真であるような前提から明らかに偽であるような結論が導かれる例を挙げれば良いのです。例えば、次の様になります。
もしエリザベス二世がアメリカ合衆国市民なら、彼女は人間である。 エリザベス二世はアメリカ合衆国市民ではない。 従って、エリザベス二世は人間ではない。
生物は皆、水がなければ生きられない。 従って生物は、水さえあれば生きられる。
新宿駅は日本の山手線にある。 大阪駅は山手線には存在しない。 従って大阪駅は日本の駅ではない。
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