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2012/05/27(日)
6月がやってくる
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5月も最後の週末です。 来週は6月。 4月も寒い日が続き、桜も遅れたというのに、翌日との気温差が10度や15度という極端な変化を見せながらも、夏は意外にも順当にやってくるようです。
着物にとって厄介なのが6月。
洋服だと「半袖解禁」と、もう盛夏と同じ格好もOKなのに、着物はまだ、その前の「合い(中間)」の季節です。 洋服だと、最近は「合い」という言葉に滅多に合わなくなりましたし、制服で「合い」のを持つ学校も珍しいですが、洋服では5月から6月の入梅迄が「合い」の季節です。 生地は夏物、袖は長袖。 今、私が担当しているお客様の守衛所の守衛さんはGW明けからこの長袖の「合い」の制服に変わりました。 学習院だとグレーの詰襟。白百合だったっけ、上着が白いセーラー服は。あそこも木綿の長袖セーラー服に変わります。
着物だけなんで、6月に入ってやっと「合い」になるのか不思議です。 ちなみに、神田明神の氏子の場合は、5月の明神様のお祭りから浴衣解禁(この祭りでその年の浴衣をおろす)になり、京都では、鴨の祭りの還御から夏物(ここでは、盛夏でなく、単の意味でしょう)とも言われています。 ちなみに、装束の場合は立夏を以って夏装束になります。 但し、装束も「盛夏」の区分があり、生地な夏用の「生絹(すずし)」に変わりますが、枚数もまだ冬と同じです。 時期的に、色目が「卯の花(表が白、裏が緑)」や「藤(表が薄紫、裏が緑)」「菖蒲や杜若(表が紫、裏が緑)」といった白や緑、薄紫が主流になり、生絹は冬の練絹に比べて下地の透けが強いので、見た目が一気に涼しくなります。何せ、その前の季節は桜や桃、菜の花なので、紅や黄の濃淡が主流。こういった暖色系から寒色系に移行するわけです。 昔の文献で既に「公家は夏装束だが、武家はまだ冬物」という記述がなされているので、着物は当時でも立夏の時期には袷であったことがわかります。
雑駁には、「6月の着物はひとえ、帯は透けない夏帯」と言われています。 細かい決め事の場合は、上旬は縮緬など袷に用いる生地の単仕立、中旬は紗袷、下旬は紗紬など透けない夏物と言います。 そこに、6月後半は入梅で雨となると、雨コートも必要になります。6月の雨コートは夏物ですよ。紗の透ける生地を使います。
こんな厄介な季節なので「6月は着物を着ないでやり過ごそう」なんて人も、昨今は多いです。 もっと一般的なのは「秋まで着物は着ないで過ごそう」という、夏物を持たない派ですね。 何せ、6、9月が単、7,8月が盛夏と、夏物の着られる時期は短いので。
なーんてのに、一番困るのは「6月の結婚式」です。 日本よりも緯度の高い西洋では、寒い時期からやっと戸外でガーデン・パーティをしても寒くない時期になるこの6月を結婚式に最適な時期としています。 着物好きとしては「折角のおよばれだから着物で行きたい」と思ったりもするわけですが、あと何度、そんな機会があるか、などと思えば、この時期の着物を揃えるのも躊躇われる。
というか、花嫁衣裳自体、綿入れでもしてそうなどっしりとした冬物の打ち掛けだったりします。留袖だった、夏物なら合いの単や盛夏の薄物のものがあって当然なのに、レンタルだと袷のみの店もあったりして。自前で夏物留袖をお持ちの方は、昨今じゃ稀でしょう。 冬物の打ち掛けに拘るなら、挙式は冬場にすればいいと思うのですが、違うのかな?
まぁ、こんな風に決め事にうるさいのは、結婚式やお茶道の格式の高い茶会に参列する場合のこと。 それ以外だと、かなり緩いです。 4月に入れば、暑い日には単解禁でいいです。 ここ最近の気候からすると、戸外で縮緬の単が着れるのは4月に限ります。 ポイントは「7月までは透けない生地を使う」こと。 浴衣よりは若干厚手な「木綿の単」とか、合せ化繊の単仕立とかがこの時期のオススメ。 5月に入れば、化繊の紗紬もOKです。正絹の紗紬と雰囲気が違うんですが、化繊の紗紬って、一体、何を模したものなのやら。6月から盛夏を越えて9月一杯OKな着用期間の長い生地です。
そして「化繊の浴衣」に襦袢を着用するのもこの6−9月に使えるモノです。生地の感じからは絹紅梅風ですが、絹紅梅はすっけすけですから、透けない化繊浴衣とは違う。 化繊は雨が降っても安心なので、この時期にはうってつけです。
オススメはセオα素材。正装系なら、シルックやシルジェリーといった素材も加わります。正絹に似せた湿気と体温放出機能があります。
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