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2011/10/04(火)
装束を研究するものは誰か
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本屋に行く 大きな本屋に行った場合、必ず「装束」に関する本を探す。
問題は、その本がどのジャンルに置かれているかだ。 装束は、実に多方面から研究されており、そのせいで、研究者が所属する分野に本は置かれてしまうのである。
まず一つが、「日本史」のジャンル。 細かくは「風俗」「生活史」「服飾史」として各時代毎に研究され、そのジャンルで上がる。 女房装束や束帯などのメインは平安時代だが、その後すたれたわけではなく、武家時代(鎌倉、室町、戦国、江戸)と伝えられ、将軍の奥方の最上正装はやっぱり女房装束だったりする。 更に明治以降にまた変化を迎える。
「地域史」などは、特に注意である。とっくに廃れたような習慣を、とある集落のあるばぁちゃんが伝えていたりする。
次の一つが「日本文学」のジャンル。文学の中で、登場人物は何を着ていたかを記述したものを追う研究者がいる。 日記は実録なので、「文学」と言うのか疑問だが、筆者がどのようなものを良いとし、悪いとしているかから、変遷をみてとれる。
そして「美術」。衣類そのものは、繊維を織ったものであるが故に一部の奉納装束を除いて消え果てしまっているが、仏像や仏画にその意匠を見出すことができる。案外と、描いた当時の最新流行の(ただし、だらしな系ではない)格好をしている。 絵巻物も同様。源氏物語なども、描かれた時期で挿絵の服装に差異がある。(既存の絵巻のモチーフを真似たことで、中途半端に古い時点の服装なものもあったりする)
そして「デザイン」。「服飾史」は厳密には、この「ファッション史」に入る。もっとも、本屋でこのカテゴリがない店も多い。 ここでは、文様や色といった単体についての本もある。
そして、「和裁・洋裁」。 はたまた「着物の着付け、着こなし」 着物のルーツをたどれば、装束に行くので、ここから研究に入る人もいる。 実際、平泉の藤原三代のミイラにかけられていた衣類の復元は、日本史の研究者の手ではなく、和裁の研究者によって、いとも簡単に解き明かされた。「着物の形状」「生活祭事の習慣」から考えた場合、意外にも現在と大きなが差異がないことに気付かされる。 着付け学校の上級コースでは、「様々な時代の衣類」として、装束の着付けを学ぶコースがわりと普通にある。
専門の機関としては「衣紋道」を伝える機関によるものがある。 以前は、皇室の着付けの奉仕のみで、一般に情報公開してこなかったのだが、最近は、どのようなもくろみなのか、公開講座がある。
そして「皇室」。彼らは無形文化財的に装束文化を伝える人々とも言える。宮中三殿と呼ばれる神を祭る場所に奉仕する典侍、掌侍と呼ばれる女性達の衣類や習慣も要チェック。 私がこの本を見つけ出したのは「女性マナー」のカテゴリだった。
そして、呉服屋そのものにも情報は存在する。 「有職紋」と呼ばれて、礼装用に着物の意匠として用いられている。 色無地でも、有職紋の地紋入りがある。 そして、帯。京都で装束を織る店は、大抵、着物用のものも織っている。装束用の生地は固いので、着物にする場合は、帯になる。 昨年は、生絹(すずし)の有職紋入りの反物が出て、のどから手が出るほど欲しかった。
最後は、「お雛様」と「お雛様用生地」 お雛様は、江戸時代の姫君の婚礼衣装を模したものであるがゆえに、装束である。「派手優先」なものも多い中で「有職雛」と呼ばれるタイプは、忠実なつくり(といいたいところが、「有職生地使用」と「有職雛」と両方あるので要注意)
この「有職雛」を作るための雛サイズの生地が、売っている場所がある。東京なら浅草橋の雛人形問屋街、そして、織物の里、桐生。お雛様を作る人は、やはり、ちゃんと研究している。
お雛様の写真集とかも見逃せない。
最後は、ゲームの攻略本コーナー。 昨今は歴史系ゲーム用に史実を記した本も発行されている。 平安時代風の時代設定だった「遥かなる時空の中で」の資料は、ダイジェスト的にはかなりまともな上にとっつきやすい。
文庫本や新書本でそういうのが出ると、探すのは著しく困難である。そう思いながら、背表紙をさらーっと眺めていく。
というわけで、どこで、装束のキーワードにひっかかるかわからないので、大きな本屋を巡るのは、結構時間がかかる。
お姫さんが、中学のときに、卒論に装束を取上げたので、ついでに家と図書館にある文献の一覧を作ったら、結構な量だった。 郡を抜いた参考文献の数の多さは、担当教師をビビらせたらしい。 知らない人は知らないが、探せば、結構な数があるのが、装束の本である。
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