|
2010/06/18(金)
なんてピュアな項羽と劉邦
|
|
|
今までの舞台つくりと余りに違ったので、とっつきにくかった改訂版「虞美人」、慣れてくると、これはこれでやっぱり「宝塚の基本のお約束は外してないなぁ」と。
主役は基本的にピュアで疑うことを知らないタイプ。 今回は、項羽のみならず劉邦までそのタイプです。 その分、ここでは張良が「クロい」です。
楚の人というのは、土地柄、ピュアで熱い、ノリの良い人物が多いとか。項羽はモロその人ですが、劉邦も楚の出身です。 劉邦の軍が「四面楚歌」で楚歌を歌えるのは当然のこと。 という意味では、劉邦だって、ピュアで熱い人な筈。 後代では、三国志で孫策と周瑜も楚の人。 明の始祖、朱元璋も、中華民国の孫文もこの土地の人です。 確かに、ピュアで熱いわ。
鴻門会で劉邦を殺そうという范増の言葉よりも、「義兄弟であることを違えたつもりはない」と言う劉邦を項羽は信じてしまいます。劉邦も劉邦でピュアですが、項羽よりも周りのオシに弱いタイプ。軍師張良や武将の韓信、妻の呂妃に押し切られて項羽と対立する羽目になっていきます。 それでも、劉邦は項羽が大好きなのですが、そういうことを表に出せない状況にどんどん追い込まれていきます。 「漢王よ、だまし討ちとは・・・」と、項羽の隙を狙った筈の50万の漢軍に、たったの3万で項羽が押し寄せるシーンは、その極致。 史実でも劉邦は、ここで家族すら馬車から振り落として逃げます。 一人になった劉邦は「私は誰も愛していない・・」と歌い上げます。本当は「愛しているのは項羽だけ」と歌いたいでしょうが、その項羽を裏切る羽目になった劉邦はそれすら言葉にすることができなくなっています。 戦いは続き、項羽は「国を分けよう・・・」と申し出、劉邦はそれを了承します。そのままであれば、義兄弟の仲を取り戻せたでしょうが、劉邦の部下達はそれを許しません。またしても劉邦は項羽を裏切ることとなり、軍を進めます。 項羽の軍師范増を引き離し、「四面楚歌」の策に項羽の軍勢はガタガタに崩れていきます。 項羽軍を追い詰めながら、劉邦はどんな思いでいたのでしょう。
その一方、部下を失い一人になった項羽の最期、やっぱり劉邦を恨んでいる節はありません。 劉邦がそういう弱い性格であること、自分たちの義兄弟の誓いを守れない立場にお互い立たされてしまったことを、もう悟ってしまったかのように。
しかし、項羽は虞美人と仲良く昇天しまいます。 それでも、死ぬまで劉邦は項羽の俤を追い、義兄弟の誓いとして切った手の甲の傷に思いを重ねます。 この物語では出てきませんが、この後に、項羽を攻めた者達、韓信も呂妃も遠ざけていくのは、そのせいなのか、と思わせる。
「うっわー、BLまっしぐら!」とはお姫さん 1幕冒頭の劉邦の死去場面「項羽が迎えに」と口にする後には、項羽と虞美人の愛のデュエット。 「項羽、虞美人とデキてるから、絶対迎えに来ない!」とお姫さん。 「劉邦の片思い」の思い出語りなのか今回の「虞美人」は、と思うことには、確かに合点な。
|
|
|