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2007/08/27(月)
着物の着てどこにいく
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着物を着ていると、このテの話になることはよくあります。 大方の人は、決まって「着たいけど、着ていくところがないからねぇ」となります。 私もたまに、この言葉を口にします。 といっても私の場合は「黒留袖いかがですか?」とか、「これは滅多にみられない袋帯(丸帯でも良い)ですよ」なんてのを薦められたときです。 さすがにいくら着物好きでも、黒留袖が着られる機会は限られており、私の場合は、ここ当分しばらくは無縁です。
とはいえ、着物そのものとして「着ていくところがない」とは私は思わないのですが、多くの人がそう思うのは、やっぱり「着物=フォーマル衣装」だからなのだと思います。 昨今は着物をお持ちの方といっても、持っているものは留袖や訪問着、付け下げといったフォーマル用途なものばかりという方も少なくありません。こういう方の手持ちの着物の着用機会となれば、やはり「ないわねぇ」と言わざるをえないのです。
もっとも、逆に、「着ていくところ作ろう」と、歌舞伎座への観劇、料亭の和室で会食など、いかにも着物の相応しい場所におめかしして出かけるという人達もいます。 でも、これらは所詮「お高い着物」の世界。「高尚な趣味」といったところでしょうか。 でも、着物には、そういった「細雪(ささめゆき)」ごっこなものとは全く異なる、庶民のものもあります。 だって、昔はみーんな着物だったんですもの。 大家の奥様が観劇におでかけになるのも着物なら、裏小路のおばちゃんが大根を買いに行くのも着物だったんです。
「家でゴロゴロする」「家事をする」「買い物に行く」「学校や幼稚園に子供を迎えに行く」「図書館に行く」日常に洋服でしていることは、なんでも着物でできます。 もちろん、こんな目的で着ている洋服は雑駁な普段着。下手するとコーディネートなんて考えないで適当に引っかぶってることも多くはありませんか?こういうとこで着物を着る場合も、やっぱり同じ。雑駁な普段着が向いています。 木綿、ウール、化繊。普段着着物の素材は洋服のソレと同じです。 普段着の洋服には絹製なんて使わないでしょ。(洗える絹のタンクトップ位は使うとしても)着物でも同じ。
着物の業界や、着物好きの人の中には、化繊を卑下する人も結構いますが、「洗える」「皺になりにくい」って便利です。 安い洋服だと、ウール100%でなく化繊100%やら、混紡やら普通なのに、着物となると何故にああも化繊を避けていくのか。 「冬は寒いし、夏は暑い」とも言われますが、それだって洋服と同じ。着物の生地がとりたてて顕著なわけではありません。
といっても、かつての化繊は随分レベルの低いものでした。 もちろん洋服用の化繊も同様なんですが、洋服生地は使われるだけに、いちはやく改良がなされたため、着物用の生地の対応は想定的には遅れていたようです。 古い着物の中には「離れてみても化繊と丸バレ」なんてのがあります。ところが、昨今は生地の風合い、プリント技術の発達で「2m離れていたら、呉服屋でも区別は難しい」位まできています。シルックなど高級化繊ともなると「触らないと判らない」のもあります。「精緻な絣とおもいきや、寄ってみればプリントなり」とか。着崩れ易いという欠点も改良されています。 保温性、吸湿性といった点も絹に近づいてきました。 昔、悪い印象をもっちゃった人は、食わずキライになっているフシがあります。
当然、お値段は破格に安いですから、気楽に着用できます。 万が一、雨に降られようが、食べこぼそうが、おこちゃまに抱きつかれようが何の心配もいりません。
昨今の和ブームも手伝ってか、浴衣売り場は大賑わい。縁日だけでなく、お台場の夕刻のそぞろ歩きや夕食にも着られています。 同じこと、なぜ、冬になるとやらないのでしょう? 呉服屋さんは、浴衣に匹敵する、手軽な着物を売らないからです。寒くなるから、襦袢や足袋が必要になりますが、あとは防寒用の羽織とショール位で十分。帯なんざ半幅でOK。 そういうのが出たら、もっと着る人増えそうな気がするんですけどね。どうなんでしょうか。
私の普段着はそんなもんです。夏なら浴衣、冬なら化繊の着物。 家なら、角帯締めて、外へはその上に袴はいて。 いーかげんに着ています。
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