優妃 讃良の着物についておもうこと
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2006/09/10(日) 院展をみにいくこと
他の地方では雨天だの「曇りのち雨」だのと、雨つは無縁
ではないというのに、関東地方だけ好天。
天気予報では「34度くらいいなるでしょう」などと。

絽の着用目安は「初旬まで」とか「重陽(9/9)迄」とか言われています。初旬なら今日はOK、重陽なら、昨日だなぁ。

って、予想気温を見れば、どう転んでも、「真夏仕様」です。
秋なので、絽の袴は止めにして、合いのにしようかとも考えていたのですが、この天気なら、やっぱり、袴も絽です。

というわけで、本日のいでたち:
 薄縹(うすはなだ)色の地に百合を描いた絽の訪問着。
百合は初夏〜盛夏柄なんだけど、初秋向きの絽は手持ちがありません。
今回はマヌケを承知。
長襦袢は、本麻地の撫子柄の透き紋紗。
袴下帯は、秋草を散らした絽の帯揚げを流用。せめてもの「秋」の演出
袴は葡萄染め無地絽の女袴。
足袋は白、草履はパール白台にパール縹の鼻緒。
バッグは、芸舞妓御用達な細長籠の夏仕様版。籠は白竹、布は薄縹地に桔梗柄の絽縮緬地。
手には、生成り地のパラソル。

昼の新幹線は1時間に一本しかないので、14時上野待ち合わせですが、熊谷13時の新幹線に乗って、40分過ぎに上野着。
地下二階から昇りまくって2階の連絡回廊へ。

右襦袢袖がやけにはみ出てくるなぁと思っていたら、
とれた!
7月末のオフ会に間に合わせた突貫工事品。洗濯もしたから、さすがの泥縄品、ほつれがでてきたらしい。
とはいえ、絽は透けるから、襦袢袖がなしでは済まない。
安全ピンを買い求めて、応急に袖をつなぐ。

今日の会の主旨は「画伯のご案内で院展を見る」というもの。
10分程前に待ち合わせ場所に行くと、しばらくして画伯の到着。
順々とメンバーが集まってきて、時間ぴったりに主宰の登場。
今回初参加の方が到着せず、皆をヤキモキさせましたが、なんと長野からのお越しで、上野駅構内で道に迷われたのだとのこと。上野駅の構造を知らない人には、意図する出口に行き着くのも意外と困難です。

いつもなら、女性の数人が袴姿なのですが、今回は私一人。
盛夏モノを持っていないと無理なので、夏場は着物率が下がります。

さて、院展。春の院展は日本橋三越のギャラリーを利用し、秋は上野美術館を利用しています。秋の院展を見るのは初めてだったのですが、春の作品に比べて、大ぶりなものが並びます。
日本画の基本は屏風画なのでしょうか。これの四曲位が基本のようです。「同人」という選ぶ側だと、大きなサイズもOKで、六曲一双(二枚で一組)といった大作もありました。
院展メンバーでは、大御所で一般にも著名な平山郁夫画伯のも、こういった大作。ここのところ追いかけているシルクロードものでした。
一般に、同じテーマを描き続ける作家さんが多いとかで、春に見た絵に似た印象の絵もいくつもありました。春のの作家名を覚えていないのですが、きっと同じ作家さんなのでしょう。
画伯はここのところ、源氏物語を自分なりに絵にしているのですが、今回は、そこから離れて、仏像を扱っていました。小浜の方のお寺の観音様だそうで、大変愛らしい顔立ちです。実物も良い作品なのでしょうけど、それを絵のモチーフとした絵もまたいい雰囲気。まさに「癒し」の逸品です。
「この人は若手でまだ二十代」「こっちは、最年長の一人で90数歳」わかるのは作家名だけですが、画伯の説明で、どんな作家さんなのかも解説されます。若手は確かに荒削りで斬新で、熟すのは70代からという世界ですが、70代だろうが、90代だろうが、皆、なんと瑞々しい感性を保っていることでしょう。解説されなければ、そんなおじいさんやおばあさんの作だなんて、想像すらできません。

ティータイムを挟んで、次は国立博物館の常設展示に小野小町図を見ようと。
十二単の女性図としても一番有名な絵ですが、ハンカチへの模写とかは見ていても、実物を見るのは初めてです。
かなり剥落が進んでおり、銀と胡粉を使った部分でしょうか、真っ黒になっています。

横には、江戸時代の模写図も展示されていました。

両方見比べて「模写図の唐衣の裏を濃縹にしているのは変ですね」と。
後ろ姿の女房装束なので、唐衣の背の一部が折り返って裏が見えている場所は、絵のほぼ中央。紅の薄様で単衣も白に、黄地にグリーンの亀甲を織り出し襟は萌黄の唐衣です。原本では褪色したのか裏は白くなっている部分です。
「縹はコントラスト強すぎ」
更に「女性の装束の裏に濃縹を使うことは普通見られない」と。

そういえば、重ね色目の話では男性の使う色目と女性の使う色目がゴッチャに書かれることもありますが、その色目の掲載された原典が何かを見れば、男性用なのか女性用なのかが判ります。
例えば「女官飾抄」なら女性用、「雁衣抄」なら男性の狩衣用です。

そういえば、縹は女性の重ねで使われる例が少ないです。
源氏物語の衣配りの段で花散里の君に贈っていますから、全く着用しないということは無かったでしょうけど。
でも、問題は「黄地に青(グリーン)の紋織り」といえば、「青色(あおいろ)」とか「麹塵(きくじん)」と呼ばれる色です。これの裏地として相応しい色となると?

「現在の仕立てでは、襟の返しと同じ色だが」と。
とすれば、襟が萌黄色ですから、裏も萌黄になります。
でも、そう塗ってあったなら、襟に萌黄色が残っているのに、裏の部分だけ褪色するのは変です。

「白、生成り、薄黄辺りがありそうな」と思いつつも、当然ながら、答えは出る筈もなく、それでも「絶対!濃縹じゃないね」とそこだけは、皆で納得断定して引き上げました。

「普通の絵を見ているときと、皆さん、目つきが違うね」と画伯がコロコロと笑う。まぁ、装束好きとしては、こういう絵では観点が異なるので。


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