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2006/05/29(月)
裄だとか身丈だとか
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昔の人は平均的には小柄だった。 そのサイズにあわせて着物の反物はできている。 今は尺幅という鯨尺1尺(約38cm)のものが一般的。 その昔はそれよりも狭い、曲尺1尺の33cmとかもあったという。 今は尺ニ(鯨尺で1尺2寸=45cm)という幅広な生地を使う装束も、33cmの反物で作ってた時代もあったんだという。身幅がニ幅、袖が一幅半といっても、今ほどは大きくはなかったのかもしれない。
さて、昨今、日本人の身長はずんずん伸びている。 男性どころか、女性だって、170cmこしちゃうのがいくらでもいる。 背が高いということは、肩幅や腕の長さもそれ相応に長いということ。 また、テニスなど運動とかしている人は身長の割に肩も張るし、手足が長くなるらしい。 はたまた、バストサイズが大きいと、体の奥行きが大きくなるので、これは身丈に影響してくる。 そいういった意味で身長がさほどでなくても、裄の長い着物を必要とする人が登場している。
そんなこんなで、今までの反物では仕立てきれないようなサイズのものが要求されてきている。
問題点は他にもある。 裄の計り方。私は「二尺物差で背骨から手首の骨の手前まで」と祖母から習ったが、本などを見ると「手を45度に下げて」という。明らかに長くなる。この寸法は洋服の寸法と大差がない寸法になる。
更に、最近の人は着物の仕草に慣れていない人が多く、腕を下にだらんと下げていたりする。そもそも、サイズぴったりの着物でも、こうやれば腕はにょっきりと出てくる。着物というものは、「どういう格好でも腕がでない丈」のものではない。
身丈も、私は低めの腰紐で慣れてしまったのだけど、本だと「ウェスト で腰紐を結び、余るようなら、更に上に」と。なんで、誂えサイズの着物が「余る」なの? ウェストに腰紐で慣れてしまった人は、これはこれで、一番安定しているとなるので、もうどうしようもない。長い着物しか着られなくなる。 この位置だと、お端折りは20cmにはなるから、着丈+20cmは必要。 だいたいこれが「身丈=身長」といわれる由縁。
そのくせ、着物の用尺や幅は変わらない。一部にワイド幅といって、40cm、42cm、45cmの反物も存在するが、普通にみかける程はない。
とすると、何が起こるかというと、「ノッポ=着物の客じゃない」なんてこと。 特にリサイクル屋など、昔の人の着ていたものしかないのだから、「着られるモノないわよ」と門前払いを食わされたこともなんどもある。 ちょっと前の仕立てあがりの化繊をメインとする店でも、そうだった。 何せ、身長168cm、洋服のときにはハイヒールを好むので、更に高く見えている筈。洋服の袖は78cmだから、そんなとこも、サッサとチェックしているに違いない。 この身長で、着物の身丈は160cm、裄は66cmあれば十分なんて人は稀らしい。裄丈を言うと、必ず「えー!そんなサイズで着られるんですか?私だった、もっと大きい寸法ですよ」と私よりはかなり小柄な店員がビックリしたように言うのにも慣れっこになってきた。 私の場合、胸がそうないので、体の厚みに必要な分はいらない。腰紐は低いのでお端折り分も少ない。礼装でなければ、ちょっと短めに着るので、その分も短い。とかなんとかすると、身長より8cmほど短い丈で済む。裄は腕は長い方だが肩はそんなに筋骨隆々ではない。ガリガリ。 (訪問着や色無地など礼装はもう十分にあるので、そっちは不要。) 着物をきたら、肘を引いて、袖口=手首に調整しちゃうのも慣れっこ。 ノッポでなくても、肘を引くのは着物の所作の基本。 逆に裄のたっぷりな袖はすりそうで怖い。 黙って立ってるだけで済む黒紋付は2尺と5分。腕を下げてても全く腕は見えない。たまたま男物のワイド幅の生地から作ったので「裄たっぷりな袖って、どんなもんだろうか」と試しに。長すぎたところで、それでなにかをする着物ではない。黒紋付は礼装中の礼装。
でも、私はきっと稀なサイズ。多くのノッポさんは着物が着たくても、「サイズがなーい!反物から仕立てたって、サイズが足らなーい!」って嘆いているに違いない。
もし、ちょっと幅広の丈長の生地が手に入るなら、ノッポさんにはアドバイス。袖丈。袖幅を広く取る場合は、袖丈も普通の1尺3寸より長めのサイズにしましょう。でないと、横ばっかりひろがって、「着物の袖」らしくなくなってしまいます。身長があるのだから、袖は長い方がバランス良いですし。1尺5寸とかにします。 袖丈長くすると、意外にも尺を取ります。伸ばす丈の4倍いりますからね。普通の小紋用の反物だと12mとかで、必ず呉服屋さんから電話が入ってきます。「袖取ると、身丈取れないんですけど」って。 いつもの回答「身丈あるっきりで仕立ててください」。 私は身丈が短い方なので、こう答えることが可能なんですが、ホントのノッポさんは、身丈も譲れないのよね。だから「長い反物のときにね」って話。
夏の着物は普段着ならまして、裄が短い方が好き。 だって、暑いから、袖を肘まで落としてなんて、みっともないことも人から見えないときにはやってたりする。 襟もゆるーく開けるし、床上がりも短くするから、身丈も短くなる。
袴の下ならなおのこと。膝より上に端折る。寒いときは膝下、暑いときは膝上。袴は便利だ。寒暖調整が簡単にできる。 膝から下は素足と絽の袴だけ。しかも密着せず離れている。 すっずし〜 たっぷりの身丈はたっぷりのお端折り。暑いときには、膝丈対丈で切ってしまいたくなる。
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