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2006/05/31(水)
着物の仕草
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着物を着たときには、「着物の仕草」がある。 いや、着る前からある。 脱ぐときだってある。
着ている間の動きは、無理のない動きにするには、洋服のときとは異なる筋肉の動きになるらしい。 これに慣れていないうちは「着物を着ると疲れる」ということになるようだ。普段の動きは制限される上に、普段使わない部分に動きがかかる。足元だって、靴と草履では力をかける場所も歩き方も違う。 その上に、「着物姿の仕草として美しい様」も追求するとなると、更にギクシャクギクシャク。
着るとき、着せてもらうとき、裄丈の合わない着物を使うと、「あら、短い着物ですね」なんてなるらしい。 私も既成の着物を見立ててると「裄が短いと思いますが」などと、(私にとっては)余計なことを言ってくれる店員がいる。見てるタグには「裄66cm Mサイズ」と書かれている。 単純計算的には、169cmの私は既製品ではLサイズと見られている。 ちょっと羽織ってみたりすると、「あらぁ、ぴったりですね」とな。 もちろん、お仕立てサイズ1尺8寸5分(約70cm)が、何もせずに「ぴったり」に見せられるわけはない。 羽織った後、両袖口を持って左右に偏らないようにひっぱる。そのまんま袖口から手首までだけ出すように肘を引く。胸元かウェストあたりに手を重ねる仕草は、着物姿ではサマになるポーズの一つ。 「手を縮こませている」と勘違いしている人が多いが、そんな窮屈な格好ではない。 ここで足をX脚ぎみに膝を曲げる。歌舞伎で背いのある女形がする仕草らしい。長着の着物は胴からまっすぐか、若干下細めに着付けるから、この足元の仕草は見えてはいない。
草履は、指に挟んだ部分に力を入れると、指の間がすれるし、歩いていても疲れる。一番怖いのは、このはき方は、前ツボに力がかかるので、ある日突然に鼻緒がすっぽ抜けるという危険があること。 鼻緒のすげを調整してもらって、指の上を通る鼻緒の方で足指全体をささえて、それで足と草履をつなげるようにする。 歩き方は、基本的には、踵から落とす歩き方だが、靴のように、爪先を大きく上げない。ほぼ同時に草履裏が全て接地するイメージ。 個人的には、お姫様ドレスのようなロングドレスの歩き方と同じだなと感じている。あれは、ハイヒールなのだけど、爪先と踵のヒールがほぼ同時に接地する歩き方なので、足首から上の動きは同じになる。
長着の場合は、歩き方は内股の方が意外にも歩幅をかせげる。 裾の動きに妨げられ難いから。 歩幅は細かく、コマコマ歩くことで速度を稼ぐ。
袴になると、かなり洋服的。歩幅も洋服並に広くできる。 草履でも靴でも足の動きは洋服と同様正面にまっすぐ足を出す式。 見栄え重視なら、わずかに外股気味のX字に歩く方が綺麗。
慣れてしまえばなんのことはない仕草。 洋服とは全然違う仕草。
ぐさぐさに着ていても、これは見につくようだ。お姫さんも一つ身からずっとなんらかの着物を四季折々に着てたら楽々に。 今風にジャージやTシャツも愛用してるのだけど、それはそれ、これはこれ。
昔、着物が一般的だった頃は、洋服と靴のしぐさになれない人達が「洋服なんて疲れる」とピーピー言っていたらしい。 今は着物になれない人達がピーピー言っている。
最近着付け教室では、ノッポさんの着付けは教えてくれないというか、仕草は「着付けの範囲」じゃないと思ってるのか、「サイズぴったりのものを着ましょう」なんて言ってるようだ。 h 着物には、着物のバランスもあるので、中途半端にどこか一部分だけ長くするのは変てこ。そして、そういったバランスのことは呉服屋が配慮してくれないのだな。 「袖丈1尺5寸ですか?独身向けにはそういう仕立てもしますが」 知ったかぶりな店員が言う。 裄ばっかり伸ばしたら、袖が四角になっちゃうじゃない。 大体、身長からみても、袖丈は並寸と比較すれば長くないと、同じような見た目になり得ない。 私の袖丈は、振袖の仕立ても請け負ったことのある祖母が、1つ身からずっと私の着物を仕立て、仕立て直ししてきた中で決めた長さ。 すっくと立つと。袖の長さは無理のないバランスの良い長さになる。
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