優妃 讃良の着物についておもうこと
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2006/04/02(日) 院展を見に行く
天気予報は一週間前から「日曜は雨」と予報していました。
多少はズレるもんなんですが、気象庁の報じた通り、土曜日はうららかなお花見日和で、翌日の日曜の朝は、曇り空に冷たい風が吹いていました。空気は湿気を含み、風の使いが「雨ですよー」と通告しています。

今日は皆で院展を見に行く日なのに。

「屋内だからいいじゃないか」とは殿。

まぁね。でも帰路とかに雨降ってるのヤなの。

とにかく、傘をバッグに入れて、オデカケです。
今日の着物は、昨日仕上がってきたばっかのおニュー!
って、長襦袢と紋紗地のコートがね。
長襦袢は、先日、ここに書いていた、雪うさぎさん。
その上に一番着物の薄牡丹色のぼかしの訪問着。
袴は松葉色。
ここに、薄紅と薄茶の間のような色無地の紋紗のコートを、装束の道中着と同じ風に着付けます。裾を、普通の道中着のように裾と並行に揃えず、前を開くようにして、脇を短くして、前裾がW型になるように腰上げの部分で調整。胸元は内側に結んである丸くけ紐にひっかけて込めて行き、胸もぴっちりと整えます。
せっかくの着物は、道中着に綺麗に隠れてしまって、伊達襟のように襟元に見えるのみ。
いえいえ、紋紗は透けるんです若干ベージュっぽい紋紗が、下から透けてくる牡丹色でずっと薄紅よりになっているのです。
装束で重要な「重ね色目」は、端から覗く3分程度の色のことじゃありません。重ねることでできる裏と表の色のどちらでもない一つの色を作るのです。
今日のは、名前を付けるなら「ソメイヨシノかさね」とかでしょうか。
文献にある「桜のかさね」の元になる桜は山桜とか八重桜のような、もっと色の濃い桜です。ソメイヨシノはそれに比べるとずっと白の印象の強い花色です。

ご同行の方も数人は袴姿。
一人は牡丹色の着物に黒の袴、一人は牡丹色の地に大きな花柄の小紋に臙脂地に桜の刺繍の袴。一人はクリーム地の2尺の長袖に花を描いた華やかなものに松葉の袴。皆,頭の高い位置に結びを作り、桜のつまみ簪を挿していました。

男性も負けてはいません。
挽き茶(陰萌黄ともいう)の無地紬のアンサンブル。「雨なのに、大丈夫?」と聞くと、「化繊なんですよ」
えーっ! とてもそうは見えません。最近は化繊反物の質も向上しましたね。
しかも、「羽織、長着、長襦袢の3点セットで1万2千円」とは。彼はホントに買い物が上手です。どこから、そんなお買い得なものを見つけてくるものやら。

上野公園を横切ると、視線が向く向く。
「卒業式」と聞く似顔絵書きさん、反対では「入学式よね」とつぶやく声。「どっちでもないんだけどね」とささやきながら、通り過ぎる私たち。

上野は東京国立博物館の法隆寺館にて、「聖徳太子展」です。国立博物館でも滅多に展示しないという刺繍曼荼羅、聖徳太子像、聖徳太子の一生を描いた屏風絵。

装束ファンの私たちの観点はチョビっと違います。
屏風絵は「千年頃の作成だから、それよりちょっと前の衣類の形態になってる筈だから」と。そういう観点で見ると、なつかしの一万円札で見るような飛鳥時代の服装でなく、道長時代かそれよりちょっと前、つまり「平安時代の一番装束の華やかな時期」の服装で描かれているようです。落剥も多く、「一番知りたいとこが剥げてる!」なんてのもあったり「なんで、この場面だけ、夏服?夏服だよね」なんてのがあったり、貴重なお葬式の着用品が見られたり。
刺繍曼荼羅はもっと古い時代の服。
被服史の一番最初の写真として出てくる有名なものですが、全部をしかも、実物を見るのは初めて。
数人の人を見比べると、男性は筒袖に下裳か半ピを上着の裾から見せて、ズボンスタイル。女性は意外にも上着の形状は男性に同じ。但し、腰紐をせず、ショールをかけています。そして、下裳か半ピの下は裾迄の裳。
そこで一人が発見。「この姿、ティアード・スカート?」
普通はプリーツ・スカートのように描かれている裳の部分が横に段々に描かれています。これが2人もいます。こんな裳もあったのでしょうか?ティアード・スカートは、腰部分に多くの布が集まることなく裾の広いスカートを実現できます。当時の人もそんなことに気づいていたのでしょうか?

次は日本橋三越に移動して「院展」へ。
目当ては高橋画伯の源氏物語絵のシリーズの一枚。今回は「夕顔」でした。暗い中に手前に灯された灯台の光りだけで浮き上がる夕顔の死に顔、そして、更に闇の中にあるかなきかのようにうつる源氏。
今回は、絵はがきになってたので、皆で買ってしまいました。
他の作家さんの作品も鑑賞します。
同人の先生、新人、入賞作と色々あります。
同人は、やはりこの道数年の実力、安心して見ることができます。
この「安心感」って不思議です。
沢山の作品に並んで、平山郁夫画伯の作品も展示されていました。
一つ見ると、ものすごい作品なのですが、他の同人の作品と並ぶと彼の作品も「その一枚」に過ぎません。日本って、こんなにも実力のある先生方が沢山いるんですね。
モチーフに、「100円市のSカン」「携帯電話」「茶髪に振袖の娘」といった現代的なモチーフもありました。「終着駅」にコカコーラの自動販売機があるのもソレでしょうか。いつのまにか「馴染みの風景」として溶け込んでしまっています。
「溶け込んでいる」といえば、電線の絡まる電子柱と電線の向こうの空も日本の風景でしょうか。
「三丁目の夕日」な一枚もあって、「殿に見せたいなー」なんてね。
外に出ると、さすがの空も堪えきれなくなっていて、雨が降り出しました。傘を差して、飲み屋を探して小伝馬町にまで流れていきました。
最後はお決まりの宴会。

満足満足な一日。


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