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2006/03/28(火)
着物における柄や色のルール
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洋服、和服を問わず、「時節にぴったり」「参加場所にぴったり」な色柄を身につけていくのは、最高のオシャレです。 春と秋はどちらも「合い」という中間の衣類ですが、マネキンが着ている服を見ると、秋は、落ち葉や収穫のイメージから、茶、黄、ボルドーといった色が中心に置かれます。 一方、春はというと、桜のピンク、若葉の薄緑、清流の薄水色といったやさしい、ふんわり系の色が並びます。
じゃあ、道行く人が、春になったら、春色の服、秋になったら秋色の服着ているかとういうと、通勤電車で回りを見回して貰えば一目瞭然。そんな人に目がいっちゃう位、他の人は無頓着なモノを着ています、 洋服の場合は、バッチリ決めた人を「オシャレな人」とみなし、そうでない人は「普通の人」と見ます。
ところが、
着物の場合だと、「バッチリ決めてて、普通」で「そうでないのは、非常識な奴」と思い込んでいるケースも多いようです。 洋服に照らしてみれば、判るように、着物だって、「バッチリ決まってる」のはオシャレで粋な人であって、そうでない人は「普通」なんですよ。季節にバッチリな色だの、柄だのって持ってるってことは、既にそれだけの着物の在庫がある証拠です。 なけなし、数枚の着物と数枚の帯を組み合わせている時点では、「運良くバッチリ合う」機会でもなければ、「普通」の範疇なのは当然。
が、洋服もそうなのだけど、着物の場合は、「柄」という大きな問題があって、本当に季節限定の柄があります。「向日葵(ひまわり)の図柄は冬には使わない」とか、「紫陽花は開花時期前後」とかです。 花には季節があり、花を見ることで人は季節を感じます。 同様に、着物に描かれた花の図柄からも人は季節を感じるわけです。 もっとも、日本には「吉祥柄」というのがあって、梅、牡丹、桜、菊などは一年中問題ないとも言われます。一枚の着物の中に四季の花が入っているようなタイプは完全にそういう目的で描かれます。 吉祥花の代表は四君子、掛け軸でも一年中使える柄です。 はたまた「名前に藤が入ってるなら、一年中藤文様はOK」なんてのもあります。藤原さんとかですね。橘さんとか桜井さん、菊池さん達は、季節と無関係にこれらの花をあしらったものを着ることができます。同様に「家紋、女紋に入っている」というのもあります。 果ては「見に行くお芝居にちなんで」「展示会にちなんで」まで。 そういう方たちは、行った先で「まぁ、心憎い取り合わせですこと」と賞賛されるのでしょう。 こうなると、通りすがりの着物姿を見て「あれ、季節でもないのxxの花の着物?」なんて、到底判断できそうにありません。 判定することすら無意味でしょう。
とはいえ、行った先でも「あれ、いまの季節には合わない柄だわ」なんて思われないためには、着物の手持ちが少ないうちは、特定の季節を感じる柄は使わず、帯や、帯揚げと帯締めの取り合わせで季節を演出している方が良いと思います。 「なけなしの訪問着が、菜の花柄なんですぅ!」では、秋にはちょっと気がひけるかと。
私の訪問着は、桃色(薄紅よりは濃いが、紅梅程は濃くない)の地に紫のぼかしが入り、更にその上に金のスプレーが彩雲のようにたなびく。 春なら白地の帯に萌黄の帯揚げを添えて、「桃の重ね」で春風。 秋なら、黒とか金茶の帯に海老茶の帯揚げで、菊をイメージの秋風。 正月は、黒の正統派に紅梅色の帯締めもきりりと梅をイメージ。 特定の柄がないので、なんとでも見立てができるわけです。
呉服屋に行くと、季節にちなんだ柄を描いた染め帯なんか見ると「いいなぁ、帯なら季節限定でもいいし」なんて思うのですが、でも、気に入った柄なら、季節不問に着用したいので、いいなぁと思いつつ、いつも買わないできている優妃でした。
菜の花の帯、雛人形飾りの帯、若紅葉の帯、トドメにクリスマス柄の帯。目にだけ残る記憶。
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