優妃 讃良の着物についておもうこと
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2006/12/16(土) 「紫式部ものがたり」に見る装束
さて、15日に見た「紫式部ものがたり」、芝居としては、大変よくできていて、役者さんも好演してたんですが、装束好きは、それとは別な面も見ちゃうんですねぇ。
ああ、これはサガだわね。
「ベルサイユのばら」では、オスカルの着ている軍服は実はナポレオン時代のものであって、オスカルの地位であれば、違った衣装を着ていた、なんてのがあるわけで、映画「ベルサイユのばら」では、外国人スタッフに外国人役者、ベルサイユロケって状態だったので、ここで問題となり、結局「正しい時代考証に則った衣装」で行われました。やっぱり、現地人だと気になっちゃうんでしょうね。

っていうわけで、同じように、装束好きとしては、「それは違うだろぉ!」って点が、必ず起きるのは何でなのやら。

まず最初、
第一幕のしょっぱな、民衆の場面で、庶民の服が染め柄だったというのは、いいことにしよう。当時の染色技術では、プリント柄のような染め柄は不可能なんですが、それでは余りに舞台が寂しい。
場面移って、式部の父登場。これが狩衣姿なんですが、後ろの裾が短い。「狩衣(かりぎぬ)」と言った場合には、後ろの裾は裾迄です。
ところが、膝位までしかありません。これは「半尻(はんじり)」と呼ばれるものになってしまう。この時代、まだ大人は半尻を着る習慣はありません。狩衣を着る場面で半尻が出てきちゃうのは、実は他でも良く見られます。なんか演劇業界全体で勘違いしているようです。その勘違いがどこから来るのか、知りたいところです。
更に、この狩衣は、袖の裄が短いです。現代人が着る着物は手を伸ばして、手首から先が見える位の丈ですが、狩衣や衣冠といった男性用装束の場合、伸ばした手がすっぽり隠れてしまう程に長いのです。これを、折り返したりして手首から先が出るように着用します。袖の上端の長さと下端の長さが異なるので、装束独特のあの袖のシルエットが作られます。これを「手を伸ばして手首が出る長さ」では、シルエットが違ってしまう。

ああ、しょっぱなからケチつけはじめちゃったョ。

さて、場面は移っていって、宮中は彰子中宮の御座所。
女房達がうち揃うべく出てきます。
ああ、あれは、桐生で織られてる二倍織物(ふたえおりもの)の「向かい蝶の丸」だな。
あら、地色が薄紫のもあるんだ。気分は生地見本位置。
装束生地は装束屋さんが織屋さんに頼んで織らせているので、装束屋さんで装束を注文しない限り入手することはできません。
映画や演劇、TV関係者は、自力で装束を製作するので、装束屋さんには頼みません。が、それでは、生地も手に入りません。
こういう舞台関係に装束用の生地を織っている場所が桐生にあるようなのです。ただ、色はともかく、柄は女性用なら向い蝶の丸か、かに六葉菊の二種類に限られているらしく、あちこちで同じ柄に出会います。

中宮彰子に仕える女房は、国家公務員ではありません。私的雇用者。今で言うなら契約社員か派遣社員といった待遇。国家公務員
なのは、内侍とかです。
んで、当時は、階級によって着る服の生地や着るものが決まっていました。女房達は主人の前では必ず裳と唐衣を身に着けていることになっていました。
(「枕草子」だと、内縁みたいなとこで、寝てたら、定子様と帝に覗き見されて、あわてて、夜着に唐衣をひっかぶって挨拶するなんて、コメディなシーンが出てくる。ホントに大事なキマリ)
一方、その生地はというと、「二倍織物は女御以上」とか「許しを得たものだけ、レッドやグリーンを使っても良い」「濃い赤や濃い紫は厳禁」というものでした。刺繍はOKだったようなので、無地ではなかったと思うのですが、位もない私的女房達の衣装は、薄色主体のしろっぽいものだったんじゃないかと思われます。
だから、二倍織物なんか着てない筈なんです。
でも、舞台が地味になるから、ここはまだいいとしましょう。
上に着てるあれは何なんだ!唐衣と裳のように見えますが、なんか変!表着が二倍織物なのに、唐衣が無地なのも変だけど、形状が変!どうも、唐衣と裳が合体したようなものを着ているようです。類似形状のものに、細長という衣類があるんですが、中宮様の前で細長はカジュアルすぎます。
そこに、ちゃんとした裳と唐衣をつけて、しかも金の冠(女雛の頭のついてる奴)の彰子様の登場。中宮はこういう場面では、小袿(こうちぎ)か細長姿なもの。勿論、冠は儀式のときしか被りません。
中宮の居間はプライベートゾーンですから、盛装しないんです。
この点も舞台やTVで守られない点です。
源氏物語で、柏木が、猫が巻き上げた簾から垣間見た女性を「女三宮に違いない」確信するのも、彼女だけ裳唐衣を着ておらず、生地は二倍織物だからなんですよ。

ウチの殿曰く「だって、普通の人はそういうこと知らないから、逆に正しい服装してると、判りにくいんじゃない」
それが理由なんでしょうかねぇ?

そこに、ちゃんとした裳と唐衣のきらびやかな紫式部の登場。初出仕の場面です。主役ですから、衣装におかねかけちゃうんでしょうけど、中宮様より派手ですよ。


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