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2006/12/15(金)
「紫式部ものがたり」を見に行く
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これはカテゴリ「装束」かしら? 会社に行く途中の乗り換え駅で日生劇場のポスターを見つけました。 大地真央主演で紫式部が主役の「歌と踊りのコメディ」だとか。 ライザ・ビルダーという英国女性が、以前に「紫式部物語」を書いていましたが、それとは違うもののようです。 ポスターでは、平安時代風にウチギや狩衣、衣冠の役者さんがおどけた格好で写っていました。真央さんは、光源氏もやるとのこと。東映の「千年の恋」では、天海祐希が源氏を演じました。ここんとこ、光源氏役はもっぱら元宝塚な状態。 以前は、長谷川一夫をはじめとして男の役者さんも演じてるんですが、ここんとこの「紫式部の頭の中の光源氏」なせいなのか、もっぱら宝塚出身。
問題は、いつ行くか。まずいことに、席を立つその瞬間まで、定時に切り上げられる保証のない状況にあります。 さらに不幸なことに、夜の公演は月水金と一日おき。昼は毎日あるのに。誰向けに上演してるか、よーく判る。 そう、昼間にお暇なオバ様方向けってことね。
幸い、15日の金曜日、17時に運よく、何もない状態。 何か入ってきてからでは困るので、サッサと席を立って、逃げるように引き上げます。 日生劇場に一番早く着くには・・・ 会社のある場所からは、乗り換えが必要。 いや、霞ヶ関で降りて日比谷公園をつっきれば、なまじな乗り換えするより早そう。日比谷公園の中は真っ暗でも歩ける位熟知しているからの所業。日の暮れた17時過ぎの日比谷公園は、場所によっては真っ暗。木立の間の小路を怪盗のような早足で、オーバー代わりのマントをなびかせて。
当日券売り場に行き着くと、前から6列目程の中央ブロックの端の1席がポツンと売れ残っています。 「ここ、ここ、残ってるんですか?」 どきどき 「はい、今、入ってきたとこなんです、良かったですね」 どうやら、あちこちに配られていた券のキャンセルとかがぎりぎりになって戻ってくるようです。 なまじ前売り買うよりいい席です。 日生劇場は東京宝塚とか東京文化会館などに比べると小ぶりな客席なので、前から6列なら、ぎりぎり舞台全体が見渡せるでしょう。しかも、役者の細かい表情なんかも見える近さでもあるので、もー最高!!
席につくと、やはり回りはオバちゃんばかり。って、いい歳した私がそう思う位の年齢なのだから、実態たるや「おばーちゃんばっか」と言った方が近いのかもしれません。 着物姿も数名。総柄小紋、藍型か越後型江戸小紋のように見える人やら、お召しか紬のようなものを召した方とか。 この位のお芝居を見に来る着物はそんな辺りが無難路線のよう。
「ミュージカル」というフレコミですが、新劇に歌や踊りも入ってるってとこですね。定番輸入物ミュージカルとか宝塚を見慣れていると、主要役者そのものが歌ったり踊ったりしないと、どーもそれっぽくなくて。 って、「新劇」だと思えば、なかなかです。 「お江戸でござる」の平安版と思ってくださればかなりアタリ。 紫式部の家族、父君、弟君、女房はコミカルなかけあいが絶妙。 父君役の上條氏って、歌声がものすごーく素敵なバリトンで、紫式部役の真央さんと対位法での歌のかけあいの部分なんて感どー!!!!! (※対位法: 単純に言うと、全然別のメロディを二人で歌うのだが、それが一つのハーモニーになる作曲法。作曲家としては憧れの技術を駆使したもの。歌い手にも力量がないとサマにならない)
マジメに二枚目に演じれば演じる程、おかしいのが安倍晴明。 シェークスピア劇なら道化役にあたるのは、二人組み若手漫才師のオーバードライブ。なかなかいい味出しています。「芝居での道化役は初めて」なんて、信じられません。 紫式部を支える力強い友である清少納言と和泉式部もキャラが立ってていいです。清少納言役は、役者としてはすっごく力量があるのですが、歌が真央さんや上條さんに及びませんでした。この2人が上手すぎるんですが、芝居では負けてないので、ちょっと残念。 ちょっと注目なのは、その他大勢の一人ながら、参議役を務めた役者さん。装束の扱いや、座るとき(装束の場合は、正座でなく「楽座(らくざ)」という、足の裏同士を合わせる座り方をします)立つときの動きが、実に流れるように綺麗なのです。 わざとなのか、式部の父の立ち居はイマイチ。 (「枕草子」でも、定子が出産のために宿下がりした先の大進という職位の人は、狩衣の裾を巻き込んで座ったり、言葉に地方訛りがあったりして納言達に笑われている。式部の父も受領フゼイ。殿上人に比べると立ち居にエレガントさがない方が「らしい」のかも)
プロフィールも書いてもらえないような大部屋役者ですが、そういった細かいとこにまで気を配ってるって、いいですねぇ。 「道長の従者」とちゃんと区別がつきます。
宝塚と違って、フィナーレがありません。 一度降りたカーテンがアンコールで開き、出演者が次々に出てきて挨拶。それでも、真央さんは、最後の場面の衣装から、十二単にカンザシを挿した正装で最後に登場。
うっとりと夢から覚めれば、9時半! 帰りの電車は何時だ? 日比谷の映画街を抜けて有楽町の駅から山手線に飛び乗るのでした。
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