優妃 讃良の着物についておもうこと
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2006/10/05(木) 成人式の着物って
10月というのは、月末がハロウィンなので、輸入食品屋を中心に、オレンジ色のかぼちゃグッズが乱舞しています。
本来、翌日の11月1日が「万聖節」という神様のお祭りの日で、その前日には神様の力が弱いのか、お化け達が暴れまわるという。
日本における、立春と節分の関係と似ています。

って、袷の季節も本番となり、そうなると出てくるのが成人式フェア。
七五三もありますが、今ごろ調達する人は遅出な方なので、呉服屋としての主力は1月の成人式目当てとなります。
正月にも着物を着る習慣のめっきり減ってきた昨今ですが、成人式に大振袖で参列する女性はまだまだ多いようです。

その「振袖」なんですが、本義的に考えると不思議な衣装です。
平安時代に遡ると、女性は裳着、男性は初冠といって、子供の衣類から大人の衣類に着替える儀式でした。
もちろん、その日のために、子供用の衣装も大人用の衣装も誂えます。
武家社会では、男性は、髪を剃るとか、烏帽子を被るということと、袖を女性のような振りの明いた着物から今の成人男性の着ている振りのあいていない着物に替えました。武家の女性の未成年と成年の違いがよく見えないのですが、「成年=既婚」ととらえていたのではないかと思われます。この場合も、男性と同じく「振りのある着物から振りのない着物」へと替わっていたのですが、江戸時代の中で、帯の発達から、既婚の着物にも振りが生じ、更に、未婚程ではなくとも、振りを長くする風潮が一般化し、今の状態につながっています、

というわけで、「振袖」ってのは、「未成年の着物」なんですよね。
七五三の着物を見ればよくわかるし、最近広まってきた十三参りの着物もそう。舞妓さんの着物が振袖なのも「未成年」の印です。

「花嫁さんの振袖は?」というと、上で「成年=既婚」という話をしましたが、女性の場合、結婚式が実際の成人式的な役割を持っていたのではないかと思います。振袖に島田髷が腰入れしますが、これを留袖と丸髷に替えるわけです。振袖は未婚女性の象徴で、裳着における前半の衣装に相当すると捉えて良いでしょう。

って、考えると、今の成人式向けの振袖って、変なんですよねぇ。
今まで着用していた振袖を着る人って至極稀で、大概は新調です。
それどころか「七五三以来」という人も珍しくない。
そして、「折角誂えたんだから」と、自分の結婚迄は礼装に使います。「友人の式に参列、親戚の式に参列」の場合、独身女性が成人式に誂えた着物を着用するのはかなり一般的な習慣でしょう。
「成人したら、振袖を着るようになる」と思っている人がいてもおかしくないようが気がします。

よくよく考えてみると、20歳前の礼装も振袖ですから、そこには何ら区別がつかないことになります。
イマドキ、高校生ともなれば、体格は大人並、15歳過辺りで肩上げも取ります。区別がつかなくて道理。
現実は「振袖姿の15,6の娘に会う可能性はない」って程度で区別してるに過ぎません。

昔は、七五三、十三参り、成人式と一定の成長と祝うと共に、衣類を着替え、異なる服や習慣に向かう心構えとしました。

三つのお祝いは、髪置き。習慣などの躾教育もこの時期に始まります。
五つは着袴。学問を始めるのもこも頃です。
七つは帯解き。平安時代にはこの頃から「殿上童」としての出仕もします。
成人式をもって、男性は冠位を授かり、宮中に出仕したり大學寮に入ったりします。ここからは「大人の男」として「勤務」する。
女性は、「結婚適齢期」として、花婿募集。宮中や貴族に使えている女性も、「女童」かられっきとした「女房」に格上げされ、職務、責務が変わります。

昔の方が判りやすかったなって感じます。
儀式と共に服が変わり、することも変わる。心構えもつき易い。

今の七五三も成人式も「昨日と明日の何も変わりない中の一日」で行われている。
イマドキの成人式は「高校の卒業時に行う」とかがいいのかもしれません。大方は高校まで出ます。その後、就職するとか専門学校、大學と分かれていきます。平安時代にも大學寮には成人後に入寮ですから、現代でも「大學はオトナの行くとこ」という風にとらえ、高校の延長とは違った心構えで通うと考えると、就職組と差異のない意識を持てるように思います。

大學を出て、就職したとき、出社するときは毎日スーツ姿となり、同じ「習う」でも「社員研修」は大學の講義とは異なる意識であるべきものでした。そういうときに「服が違う」って、「もう昨日までとは違うんだ。甘えてはいられない」という意識を起こさせます。


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