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2006/10/13(金)
子供の躾と着物
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「子供を冠婚葬祭の席に同伴する」「大事なお客様を迎える場合に同席させる」「親が礼装していくような場所に同伴する」っていくつ位からと考えていますか? そのときには、何を着せて行こうと考えていますか?
日本では、昔は、成人男子と女子供が食事を同席することはありませんでした。更に、本家で節会毎に宴会を開くといっても、そこは男性達だけの席でありました。 欧米においても、同様で、ちょっとした家では、子供というのは、台所の端で食事をして、自宅のディナー席にすら同席しないものでした。 「ピーターパン」の話でも、親はウェンディ達を置いてパーティにでかけて行きます。そういう時間帯に親に代わって子供達の面倒を見るのが、 小さいうちは「乳母」、ある程度大きくなれば、メアリー・ポピンズのような「家庭教師」達でした。若干格下の家では、臨時雇いの「ベビーシッター」も普通に使われます。欧米人には今でも普通の感覚です。
日本では、ベビーシッターの習慣が普及しませんでした。 祖母や同居親族がいる場合にそこに預ける位でしょうか。 また、日本の場合は、「夫婦同伴」が一般的ではないので、「母親が見ていれば良い」ということもあったかと。
とはいえ、中途半端に欧米の習慣も入ってきたし、核家族で親も親族も近くにはなくという状況では、何かにつけて、赤ん坊だろうがなんだろうが同伴せざるを得ない状況になっています。
ご恩のあるご夫婦を結婚式に招いておいて「赤ん坊はご遠慮下さい」ってのは、実際無理な話。
こういうときに、どうするかは、大雑把には、二つに割れます。 ケース1「とにかく、親族だとか知り合いだとか有償サービスだとかに預けて同伴はしない」 ケース2「幼いと言えども、それなりの格好をさせ、それなりの礼儀をわきまえさせて同席させる」 何歳で、ケース2に切り替えるか、TPOで分けるかも含めれば、パターンは細分化。
「幼くとも同席」の例は、遠くは平安の公家にもあります。 皇太子になった皇子は、全ての年齢行事が早めに行われ、しかも、幼いうちから表に立ちました。 初冠、着裳して初めて大人になる平安社会、それなりのランクの子は、童姿、女童姿で、小さいうちから宮中や、主筋の家に仕えていました。 「枕草子」では、定子の甥っ子の松君という幼い子が、まだ殿上童仕えするよりずっと幼いうちなのでしょうけど、親に連れられて定子のいる御殿を訪ねる場面も出てきます。松君の服装は記述には出てきませんが、しかるべき家の子息ですから、幼いといえども、それなりの格好をしていたと思われますし、伯母とはいえ中宮である定子に、型に適った挨拶をしてみせて、清少納言達女房がそれを垣間見で「きゃーん、かわいい!」ときゃいきゃいと言っていたのでしょう。
幼いと言えども、「表に出す」ってことは、そういうことだと思っています。それなりの服装で、それなりの挨拶ができて、限られた時間で良いから、子供らしくない程にかしこまって見せられること。
「小さいんだから、カッコつけなくてもいいわよね。子供には可愛そうだし」と気楽な格好は、子供には逆効果。いいかげんで良いと認識させてしまいます。 逆にいつもとは、異なる、ちょっと堅苦しい位のビシっとした格好をさせて「今日はなんだか違うぞ」と思わせる方が良いです。 但し、ホントに子供は長続きしません、「帰路は気楽な格好に着替えさせる」などして、しゃっっちょこばった時間は短くします。 意外と子供は、こういったメリハリをつけて切り替えるのは得意です。
ウチのお姫さんの通っていた保育園は、こういう指導方針で、自治体の行事に参加するはTVには出るわ、卒園式は小学校の入学式よりビシっとキメて見せるは、と、大人をびっくりさせる礼儀正しさを見せるのですが、裏ははっちゃけ、ぶっちゃけ。平日は「必ず着替えを一式持たせて下さい」って位、汚れるのもかまわず騒ぎます。
一方、「幼い子供に、そんな大人びたことさせるのなんてやだわ」という人もいます。預けられる場所があるとか、そもそも、そんな機会自体が存在しない家ってのはあります。実家を訪問するのに、子供がきちんとご挨拶できなくたって「子供なんだから」とこだわらないご家庭もあります。そういう家では、そういったことが必要になる中学生とか、高校生になる頃迄に身に付けさせれば十分です。
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