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2006/10/11(水)
名古屋帯って
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帯も遡るとキリがないし、昨今常識な「お太鼓結び」自体、幕末に考案されたって位、最近のものです、 なんで、ま、その辺から。 「お太鼓結び」を結ぶ帯の本義は「丸帯」です。 丸帯というのは、幅1尺8寸に織られた帯地を二つに折って袋に縫い合わせた形状のものです。裏と表がつながっていますから、裏側になる部分にも柄が織られています。 着用するときは、袋帯と同じく、前は半分に折り、後ろは二重太鼓に結びます。 この略版が「袋帯」。昔は裏表が筒状に織られているものだったように思うのですが、最近は、共生地を裏地として縫い合わせたものでも袋帯と言って売られています。丸帯との違いは、裏は共生地ですが、柄のない地紋だけになっています。その分、「軽い」「手間がかからない」ということで、便利に使われたのが広まったのだとか。 昔の丸帯は袋帯とは異なる独特の大柄でしたが、最近の丸帯の柄では、仕立てて着用すると、区別が付きにくいように思います。 更に略なのが名古屋帯。 胴の部分はどうせ半分に折るのだからと、ここには裏をつけずにそのまま二つ折にして綴じてしまう形態です。名古屋で考案されたから「名古屋帯」だそうな。 名古屋帯になると、素材も多様化し、塩瀬や縮緬の地に描き染めした「染め帯」や、紬地の織り帯やさらにそれに描きを加えた染め帯、そして、端の縫い代を持たない「八寸名古屋」というものまで登場します。 その上に、一旦「胴に裏をつけない」ということにしたのに、それでは色々と差し支えが生じて「手先だけ半分に綴じる」という「松葉仕立て」や「袋帯と同じく胴にも裏をつける」という「開き仕立て」と仕立て方も様様になります。八寸名古屋も、お太鼓部分の引き返しを綴じてしまう「綴じ仕立て」と、ここを綴じないで開けたままにする「トンネル仕立て」があります。 カジュアル、普段着系向きのものは一重太鼓向きということで、袋帯に比べて短い仕立てになっています。 逆に、この名古屋帯の長さに仕立てた袋帯を「袋名古屋帯」とか「京袋帯」と呼びます。昔は、長さで値段は変わりますから、京都の人は必要な長さだけ織って貰うという注文の仕方をしたようです。 ※ ちなみに、「袋名古屋」というと、八寸名古屋を指す言葉として使われていることも多いです。
さらに、もっと厄介なものがあります。 「帯の仕立て替え」したもの。または仕立て換えもどき。 「丸帯は重いので、袋帯に」 「袋帯は重いので名古屋帯に」 「丸帯の裏分は小袋帯に」 なーんて、やると、柄は丸帯なのに形態は袋帯や名古屋帯、半幅帯なものができます。 そも、名古屋帯だって、「略儀」なので、最初っから錦織りで名古屋帯想定で織ったものだってあります。 「小袋帯」は、一種の全通帯を半幅に仕立てたもの。 専用の帯裏を用意していて「裏をつければ、袋帯になります」と謳う錦織りの名古屋帯も出てきました。開き仕立てといっても、同じ地紋地色の裏なら「袋帯」ですもんね。 半幅の小袋帯だって、後ろが全幅にできないので、帯付にするとバレバレですが、羽織来ちゃえば、帯揚げと帯締めでもう区別不能です。 結構旅先の夕食時にやるカッコ付けの小ワザ。
というわけで、「名古屋帯」は、形態における「略」なので、格的なあ「略」ではありません。今の感覚なら「二部式に仕立ててしまうと、同じ袋帯でも格下になるでしょうか?」というようなものです。 格はあくまで、生地や柄で決まります。
とはいえ、なんとなく、新規に販売される名古屋帯には、袋帯並の織柄のものが希少な気がします。お店の人も袋帯を勧めますから、そうと知らない人が気づきにくいようにも思えます。 大人になってから着物好きになって、周りの親や親戚から教えて貰えなかった人の中には「名古屋帯はカジュアル用の染め帯や紬地モノ」って思っちゃっている人さえいます、
一番な証拠。昨今の定義では「喪服用の帯は、黒で不祝儀地紋の『袋帯』か『名古屋帯』のこと」というもの。 ホントの正式は丸帯なのは当然ですが、袋帯でも名古屋帯でも良いんです。「生地が同じなら同格」のいい証拠です。
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