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2005/04/27(水)
能を見る初心者の条件
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先日、能見物の記事を書いたところ、お便りを頂きました。 それで思ったことが「初心者といえども、最低これだけは必要」な何かがあるのではないかと。そして、昨今の現代人の場合は、かならずしも、それを持っていないことも十分にあるんじゃないかと。
ポイント1 話を知っている 今回見た「橋弁慶」は童謡「牛若丸」で有名な話です。私と殿は歳の関係で当然知っていて、お姫さんも、保育園で習いました。 今年の大河ドラマ「義経」を見てる人なら、知ってるかも。 でも、日本国民の全員が、知ってるのでしょうか? 能の演目で多いものに「源氏物語」「平家物語」「義経」ネタがありますが、これらも「知ってて当然」ではなくなってきているでしょう。例えば「安宅(あたか)」、その名を知らなくても「歌舞伎の『勧進帳』」といえば、「ああ」と言う人もいるでしょう。でも「勧進帳ぉ???」という人もいるでしょう。 「能の『安宅』は知らないけど、歌舞伎の『勧進帳』なら知ってるわ」という人には『安宅』は初心者向けです。 これから見に行く予定の『羽衣』もうちの一家は話を知っていますが、さて、世間一般的に天女の羽衣の話は既知なものやら。 というわけで「話を知ってる」という点で初心者向けポイントになるわけですが、知らない人にとっては、このポイントは加算できないという次第。 ポイント2 文語文、古典文がわかる 中学まで出ていれば、「古文」の授業で、何がしかの古典文には触れている筈ですが、英語と一緒できれいさっぱり忘れきっている人の方が多いです。 私の場合、教会で賛美歌歌ったり、大学の合唱団でミサ曲などを歌った経験があります。この歌詞が文語文なんです。(最近は「言文一致運動」とかで、聖書も詩篇も賛美歌も今の話し言葉調に変わってしました。) というわけで、文語文にはちょっと慣れています。 また、個人的に平安女流文学などを読んでいるので、この辺でも慣れがあります。お姫さんも少しは読むので、同様。
普通の人の場合、古文、文語文になった時点で、「外国語と一緒」な感じに「何言ってるかわからない」になるでしょう。私の母親なんかがそうです。賛美歌の歌詞すら意味不明で、能の謡は全然聞き取れません。 ポイント3 動き、舞がある 今回の『橋弁慶』には、弁慶と牛若丸の丁々発止がありました。また、狂言方の出番も動きが多く、それだけで、何をしているのかわかりやすかったです。 そういう意味では、舞中心の『羽衣』『石橋』『土蜘蛛』などはその対象かなと。大学時代に始めてみた能は『小鍛冶』でしたが、前段の話しは全然わかりませんでしたが、後段の相槌を打ちながら刀(?)を仕上げていくところはわかりました。
動きの大きい場合、演者の言葉は短く、動作とあいまって、何を言っているのかがわかりやすくなります。 ポイント4 子方が出てくる 『橋弁慶』で実感。子方さんはいるだけで、飽きません! 弁慶もので、子方のやる稚児がずらーっと並ぶ能など、見ているだけでうっとりしそうです。(この演目名何なのだろう?) ただ、内部の方のお話では、いい子方さんがいないと、成り立たない演目なので、上演されにくいものなのだそうです。 今回の『橋弁慶』や『烏帽子折り』などは牛若役はシテに匹敵する役なので、まして子方さんを得にくいとか。
といわけで さて、読まれた方、どこかの年間番組表みて、これらのポイントを獲得できそうな演目がありましたでしょうか? 因みに定期演目の中では私でも全滅です。
これからの能公演の予定演目の例 観世九皐会: 『鵺』『杜若』『大江山』『雲雀山』『鵜飼』 室生会: 加茂、草紙洗 須磨源氏、三笑、六浦、阿漕、枕慈童、半蔀、熊坂、敦盛、井筒、鵺 五雲会: 氷室、歌占、雲雀山、大江山、岩船、経政、柏崎、紅葉狩り、巻絹、女郎花、花筐、舎利、三輪、忠信、班女 銕仙会: 隅田川、熊坂、忠度、一角千人、野宮、車僧、班女、経正、白髪、玉鬘、雷電、三輪、玄奘、 杜若、融、楊貴妃、采女
この中だと、見たいなと思うのは「紅葉狩り」「一角千人」。これも「花よりも」の影響。 全然わからないけど、姿の華麗さに見てみたいと思うのは「枕慈童」。でも、この辺はチケット取るかわかりません。
『小鍛冶』で「見れなくはない」と思い、『影清』で「やっぱり能は寝ちゃうわ」と思ったヤツが『橋弁慶』で「おー、面白いじゃないか」と豹変したばっかの、初心者なヤツです。 これから見ていく番組で、感じたことを書いていきたいと思います。
「能って何」を楽に知りたい人に オススメは成田美奈子作の「花よりも花の如く」今3巻まで出ています。主役の憲人が若手シテで、演じる話の中で、一番の悩みドコロをネタにストーリーが展開するので、アラスジやサワリを知ることができます。 (なもんで、全然初心者向きじゃない「天鼓」なんかも見たいと思ってしまう) 衣装からはいっちゃおうという人には、淡交社刊『演目別にみる能装束』。「衣装が綺麗なら見れる」という私の様なアホーが演目を決めるのに便利な一冊。
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