|
2004/05/25(火)
暦と着物
|
|
|
また暑くなってきましたね。 この時期、着物は週毎に着るものが変わるので、一年中着物で暮らそうという人間にとっては厄介な季節です。 地球温暖化と都市型ヒートアイランド現象による酷暑期間の長期化と逆に室内のクーラーによる対応によって、マジメに守ると暑すぎるは寒すぎるは、という気もするし、その決め事、東西に広い日本の中で本当に一律だったのかと思うとなおのことうそ臭く。想像するに、そういったことを定めた場所の気候に沿っていたのではないかと思われます。 一つは江戸城と江戸屋敷のある江戸。もう一方は千年の王城京都。京都は葵祭、祇園会、送り火が衣替えの基本日程。一方、江戸は三社さまや神田明神、山王さまのお祭りが基本です。
『奥女中袖鏡』という江戸時代の書があります。これはきっと江戸を基本としたものでしょう。 旧暦4/1(新暦では今年は5/19)から5/4: 絹綿を入れない絹地袷 旧暦5/5(新暦では今年は6/21)から8月末: ひとえ 旧暦9/1(新暦では今年は10/14)から9/8: 絹綿を入れない絹地袷 旧暦9/10(新暦では今年は10/22)から: 絹綿を入れた絹地小袖
更にひとえ期間は暑さに合わせて次のように着かさねます。 初夏; 絽or縮緬のひとえの下に羽二重の襲ね 暑く: 絽or縮緬のひとえの下に上布の襲ね 更に: 絹縮のひとえの下に上布の襲ね 酷暑: 越後縮のひとえの下に上布の襲ね
四月一日を「わたぬき」とも読みますがこれは更衣の時期として4/1から着物の絹綿を抜いたものを着用するからです。 現在の着物の季では紗袷はいつだの、夏塩沢はいつだのといいますが、この時代の「ひとえを重ねる」の方が毎日の寒暖にも対応でき、着用時期が長くて済みそうです。 特に「紗袷」はもったいないものといわれるものの一つですが、紗の単と絽の単を重ね着してたら、暑くなればそれぞれ一枚で着れば良いので使用期間が長くなります。
さて、一方の京都の更衣。「満佐須計装束抄」という室町時代に書かれた装束に関する着替えのタイミングは次の通りです。
4月: 薄衣の五衣、生絹(すずし)の単衣、菖蒲、藤、躑躅、橘 生地は薄くなりますが冬と同じ袷仕立 5月: ひねり重ね五衣に生絹の単衣 撫子、菖蒲 袷でなく単仕立にしたものを袖と襟の部分で一枚にあわせたもの。 6月: ひとえがさね 重ねる枚数が減り、ひねり重ねにしたものを3枚 7/7から: ひとえがさね(6月に同じ)、柄は秋の七草 8/1〜8/15: ひねりがさね(5月に同じ)、柄は菊、紅葉、ススキなど 8/15〜9/8: 綿いれぬ生絹の五衣 9/9〜9月末:綿入れた生衣の五衣 10/1〜五節: 練絹に綿入れた五衣、菊や紅葉柄 五節〜3月末: 練絹に綿入れた五衣、祝い柄、梅、桜、山吹、
上布は木綿が庶民に一般的に普及する一方で上等な織にした麻布が上流階級に流行りました。平安時代は麻は庶民のもので貴族達は絹をもっぱら使用しました。夏は生絹(すずし)という練らない絹で仕立てたものを着用しました。これは麻のように張っており、薄い地なので涼しいのです。 冬場は練った絹を使いますが、生絹の方が練らないで済む分作りやすかったのか、「生絹に綿入れ」という着方があります。 7/7が祇園会(ぎおんえ)です。これを機に「残暑」に入るので、暑いものの柄は秋草に。五節は今の勤労感謝の日にあたります。 天皇は今年取れた米を奉げて新嘗祭を行います。 神様達はここでお山にお帰りになって春の紀元節までお休みなんですが、人間達はここから正月をはさんで紀元節までお祭りシーズンとなります。なので「祝いに着るもの」と「正月前後に着るもの」は同じです。(祝いでない、初春用もあります)
|
|
|
|