|
2004/03/31(水)
黒紋付と喪の小物の格
|
|
|
先日、葬式があったので、喪服に関して再考する機会となった。 持論として「着物は家格でTPOに相応しいものが変わる」がある。 いい例が銘仙やお召し。いいお家の人は普段着に遣い、下の方だとよそゆきに使う。
さて、黒紋付を喪服に装う場合もこの理論はなりたつ筈。 長着を見れば、大雑把には縮緬系と羽二重系に分かれるが、この生地の価格が結構幅がある。「西は縮緬、東は羽二重」とか「縮緬が上、羽二重は下」など諸説ある。 「とにかく着物で黒紋付ならいい」といわんばかりの安物は塩瀬という羽二重系の生地なので、後者の説はこんなことに起因するに違いない。織り方は好き好きだが、価格は1反に使った絹の重さで決まる。「重い方が高い」というわけ。 縮緬は重さで風合いは余り変わらないが羽二重は露骨に見目も肌触りも変わる。面白い生地である。
三つ重ねはないにしても二つ重ねかそれを模したものを用いるのは家格の上の方だろう。一重なのはそれより下かと。 が「不祝儀は『重なる』を忌むので一重にする」という家流もあるらしい。 葬式は冬場に多いが、戸外に長時間、しかもコートなしで立たなくてはならないような場合には、長襦袢を二枚重ねにするなどして「重ね着」をしておくと暖かい。
次が帯。選ぶときも「袋帯になさいますか?名古屋帯になさいますか?」と聞かれた。どの本を見ても「袋帯か名古屋帯」とあって、何をもって差をつけるのかは書かれていない。 多分、これは「家格」だの「財力」だので決まることなのだと思われる。
以下同文に近いのが帯締めと帯揚げ。趣味と財力で決めればよい。 帯揚げも縮緬系と綸子系に分かれる。縮緬の着物には縮緬の、羽二重の着物には綸子の帯揚げがいいらしい。コーディネートの問題であろう。多くを見られる店では柄どころか価格もピンキリ。 帯締めは丸くけが本義らしいが、これは袋帯に使うものだろう。 名古屋帯に丸くけでは笑いそうだ。組み紐が一般だが、黒というだけで丸組み、角組み、平組みと多彩でしかも、途中の折柄もある。当然ピンキリ。
更に以下同文なのが草履とバッグ。「同素材」が基本らしい。 シュス地がきっと本義。耐久性を考えるならば、つや消しエナメルが良い。シュス地の草履、一回の葬儀(3日行程)で親指のとこが楕円に擦れてる。あーあ。
さて、ちょっと上の年代の方々の喪服の例。 父方祖母:関東出身農家。羽二重の着物に丸くけの帯締め。 羽二重の匁は中の下くらい。袋帯。 母方祖母:関西出身大店。縮緬の着物に京組紐。 かなり良い縮緬地 母: 結婚後、パートした際の収入で購入。中の中羽二重。 同居してた父方祖母の帯締めや帯揚げを共有してた。 叔父の妻:関東出身。着物にはこだわる良いお家出身。 結婚時持参の実家紋。素材不明かなり重い上級品。 私: 結婚後自力調達のくせに実家紋。 こだわりの上質羽二重。江戸組紐、綸子帯揚げ。 名古屋帯を二部式で。 娘: 中古品。塩瀬なんだか縮緬なんだかわからない程薄い。子供用には軽くていいとも言える。
これを見ると、財力や家、東西の差を見る気がする。
|
|
|