|
2004/10/29(金)
西陣 老舗の実力
|
|
|
本日、娘は「漢字検定」なるものを受験。 夕刻6時から始まるソレに送っていって、スーパーで買物しながら待つことに。 待ち合わせ場所は、専門店街にある呉服屋さん。
偶然にも、その日、西陣の機屋 菱善の展示会だった。 「西陣で7番目に古い」とのこと。といっても慶長年間の創業。 前にも聞いたことがあるのだが、西陣の機屋はなかなか長続きせず、江戸期の創業ですら数軒に留まる。
今年、「創業200年」で、蔵から掘り出した明治期の絵型からの復刻帯を機から作って織り上げたという。普通の糸よりも細く、糸かせだけでも「キュッキュ」と絹鳴りする上質のもの。 コンピュータ画像的にはかなり解像度の高い図柄は目をこらしても全くデコボコがない。織り方は装束でいうところの「固織物(かたおりもの)」という類。これは糸が浮いていない分使用時の擦れが起き難く、扱いやすい。
そして色が良い。しっくりした濃萌黄の葉、花田色の尾長鳥、こういった色合いは何故か古い機屋でしかお目にかかれない。 「昨年の『美しいキモノ』冬号にも出したんですよ」と見せてくれた。同じものだという雑誌の写真は青を強く出したせいで、花田色が鮮やかなコバルト色になり、萌黄はより暗く沈んだ感じになっていた。これはコレで派手目の気の利いた絵柄だが、好みではない。この本を見たとき、そんな風に通り過ぎてしまったのだと思う。しかし、実物の色合いのなんと美しいことか。 一つ一つの色が主張することなく、しっくりと収まっている。 「逸品の訪問着でも引けを取らない」というが、「大島にも嫌味なく似合う」というマルチな帯である。 「糸が細い」ということは地が薄く、軽いということでもある。 軽くて柔らかい帯は身に付けていて楽。
以前、銀座で見た俵屋喜多川の帯を思いださせる。
中でも細かい草花を一面に描いた図柄は心引かれた。こんな柄の帯は今までみたことがない。衣服史の室町から戦国辺りに着用されたという打掛にこんな柄があったような。打ちかけに仕立てるとしたら、この3倍は必要だろうか、眩暈がするような額になろう。
お値段は、「ご、ごじゅうまん!!!!!」 「デパートだとその倍なんですが、今回は半額に」と店長。 はぁ、それを更に半分にしても手が出ません。 100万円だと言われても納得するできばえですが。
「それでは、こちらの1万円の名古屋帯なぞいかがでしょうか?」逸品の帯は見世物で1万円の帯が本命なのだろうか。50万円に比べると1万円なんてはした金のように安く感じてしまうが、正気に返れば、決して安くはない金額。 それ以上に「あれ、見たあとで1万円程度の帯なんぞ、安もんにしか見えんわ」という思いも。
帰宅後、殿にこの話をする。「後になれば、100万円できるよ。そのときに買えばいいよ」と。俵屋の帯の話をしたときにも同じこと言わなかったっけ。「だから、なんども機会はあるんだよ。お金が出来たときにも、ちゃんといいのがあるさ」と。 あと30年位はつぶれないでいて欲しい。いや、ここまできて、30年程度ではつぶれんだろう。
菱善 木野織物のサイトはこちら。 http://www.kyo10.com/kino/index.html
|
|
|