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2004/10/14(木)
何度も出てくる裄の話
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先週、「きもの」市で仕立てを頼んだときに、手持ちの着物の寸法を測って使ってもらうことにした。 私の担当は部長格なので、採寸は担当者を呼んで測らせた。 「きっと『このサイズでいいんですかぁ?』って言うわよ」と部長と話していると、本当に「このサイズですかぁ?」と。 部長とクックと笑いあう。 身長が高く腕も長いので、裄は一尺八寸。なのに、身丈は四尺ちょっと。これはイマドキの採寸法からすると20cmばかり短い。 「腰紐位置低いからですねぇ」と部長サン。さすがわかっていらっしゃる。 私「裄も最近は、45度下げてが普通でしょ」 部長「そうでないと、皆さん、短いといって変更を依頼してくるので」 慣れなのかなぁ。ボケっとしていると袖から15cmばかり出るような方が「丁度良い」って感じるのだけど。
もっとも、袖の長さは「用途」によっても若干違ってくる。 普段着用は袖下をすったり、袖口をすったりしないように短めにする。武士も実践用には鯉口が絡まないように1寸ばかり短く仕立てたという。一方、礼装用にはそんな心配はいらない。いっそ腕なんぞ見えない方がずっと重要。 私の黒紋付は2尺と5分。「上等の羽二重」を使うために男物のワイド反物を使ったので余裕で取れた。 一方、お下がりや安物の既製化繊なら1尺6寸だって良い。 所詮、普段着か、街着。袖の中で手を縮めれば、手首と袖口はぴったりと合う。
数日前の話をなんで今日しているかといえば、夏物の絽の袴を洗いに出すのに呉服屋に行った。そこで、大伯母から貰ってきた着物の話になった。 店主「寸法大丈夫でした?」 私「並寸だったから」 店主「私でも1尺8寸なんだから、そんなんじゃダメですよ!」 な、なんだ、この言い切りは? 相手は歳の頃は60台位だろうか、160cmに満たない程度で、若干ふくよかなタイプ。肩に肉のある人は見かけの割に裄を長く取る必要があるというから、案外とこの人は裄がいるのかもしれない。が、それより20cm近く背が高いからって、短いのが着られないと言い切るとは。
考え方は家によって違うので、それぞれなんだろうけど。
うちの場合は、母方の祖母は「男より大きい寸法なんて言えやしない」(「男」ってのは「男並寸」という寸法。裄で1尺8寸)と、やはり背の高かった私の母の着物を並寸で仕立て続けた人。 それお下がりで着てたから、並寸(1尺六寸)なんて着慣れちゃってるんだわ。身丈が短いのもそのせい。
どっちが便利かっていえば、「並寸が着られる」って考え方の方。 だって、リサイクル品だって、既製品だって、お下がりだって大抵は並寸。これをお直しなしで着られるのだから。
そも、既製品に関しては、裄を優先すると、身幅が広くて、袖が短いなんてことより厄介な目に遭う。 私の身幅は7寸。なんと並寸よりも細い。通常はこれを補正なしで着るのだから、補正を前提にしている既製品はぶっかぶか。 前後に衣紋ヒダを取って調整するのだが、これは着崩れの原因。
いやー、近所の行き着けの呉服屋のオバちゃんがあんなこと言うとは思わなかった。
その問題の大伯母のお下がりの着物と羽織。ホラ、全然問題ない。
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