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2004/09/11(土)
さらばチャーリー・アンドリュー
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あの悲しみの出来事があったのは、今からちょうど一年前のこと。
松子が20歳の頃から愛用していた、チャーリー・アンドリューという名の愛しき自転車との永遠の別れを知ったのは。。。。
彼と始めてあったのは、松子がまだ故郷にいて短大を卒業したばかりの春の事だった。近くに出来たばかりの大型自転車屋さんの壁に吊るされていた麗しき外見に松子が一目惚れしたのである。
いわゆるママチャリとは異なり、また走りやすさを重視したモトクロスタイプやモトクロスモドキとも違い、言うならばルックスのみを追求したグットルッキングチャリ。クラシックなデザインで、そのルックスは類を見ない程、その大型自転車店の中で抜群に秀でていた。
店員さんにはしごを使っておろしてもらい、実際に試乗させていただいた時は、すでに興奮しているのでマトモな判断ができる訳も無く、タイヤが太いためかなり漕ぐのが重いはずなのに、「うん、走り心地もいい!すごく安定してる!!」などと夢見心地に漠然と感想を述べていた。
こうして、アンドリューは両親からの就職祝いと言う事で、松子の元へやってくる事になったのである。
しばらくの間嬉しさのあまり自転車通勤をしていたが、やはりタイヤが重く日に日に所要時間が長くなっていき、もともと自転車で通える距離では無かったので、(最後の方は一時間弱かかっていた)数カ月で通勤の任務からは解き放たれた。
それでも常に街乗りとしては松子の側にいたし、その後東京に出てくる時も引っ越しの荷造りの時に、一番最後に絶妙なバランスでトラックの荷台に詰め込まれ、共に上京も果たした。
東京生活ではさらに彼の存在が欠かせなくなり、お買い物、ちょっと駅まで、晴れた日のお散歩、、、いつも側にアンドリュー。
だったのに。
いつものように仕事がおわり、電車に乗って帰ってきて、駅で彼の姿を探した、、、。しかし探せど探せど一向に見当たらないではないか、、、! あの麗しい姿、購入時から何年も経って多少雨風にさらされた経験も伴い、幾分疲れた感も有るが、それでもいつもたくさんの自転車の中でひときわ輝いていたあの姿が見えないのである。
実は前にも同じ経験があった。そうこの場所は駐輪禁止区域。朝駐輪所に行く時間が無くて、改札口に近いこの場所に置き去りにしてしまったため、撤去されしまったのである。明らかに松子の過失である。 しかしさらに松子の過失は続いた。前回撤去された時は自宅より遠く離れた引き取り所まで迎えに行き、手数料を支払って松子の元へ戻ってきてくれたのだが、この頃は非常に忙しく、お休みの日も遠い引き取り所まで行く気力が無かった。 季節は夏に入り暑かった事も松子のやる気のなさにさらに拍車をかけ、あろうことか松子はアンドリューを数カ月に渡って引き取り所に放置したまま過ごしてしまったのだ。
九月に入り幾分か暑さも和らぎ、仕事も落ち着いてきたある日、ようやく松子は超重たいお尻を上げた。引き取り所に到着した頃には、日も落ちてきて引き取り所が閉まる時間も迫っていた。
遅くなってごめんよ、アンドリュー!迎えにきたからね。。。
うすぐらい中で松子は捜索に乗り出した。 しかし、そう広く無い引き取り所を一周しても彼の姿が無い。
係りのおじさんが、様子を伺いにやってきた。「どんな自転車?」と訪ねるおじさん。「かっこいいので一目でわかります」と答える半泣き松子。
「まさか、まさか、まさか」
頭と胸はもう不安に支配されていた。
そう一目でわかるはずなのに!彼がいないなんて!!!
焦る松子におじさんは更に問うた。 「いつ頃撤去されたの?月によって置く場所をかえてるからね」
なに!?それは朗報!早く言え!!
「えっと、数カ月になるので、ハッキリ覚えて無いのですが五月が六月ごろだと。。。。」
「はあ!? 今九月だよ!なんですぐとりに来ないの?お嬢ちゃん、三ヶ月経ったら処分する事になってるの、はがきこなかった??」
「・・・・こなかった・・・・」
もはや目には涙である。 (というか今も泣きそうになってきた。)
すでに日は暮れて真っ暗、諦めきれずにおじさんと最後の捜索。
しかし結果は同じだった。
「ごめんよ、ごめんなさい、アンドリュー。ああ、ばか松子!どんなにアンドリューが寂しい思いをしたか!忙しくても暑さに焼けこげそうになっても、彼を迎えに行くべきだった!」
気付くのはいつも過ぎ去ったあと。 覆水は盆に帰らないのである。
悲しみと後悔の渦の中、しばらくは申し訳ない気持ちがいっぱいで新しい自転車の事等考える余裕も無かったが、やはり生活しているとどうしても必要になる場面が出てくるわけで、半年ほどたったころからは新しい子を迎える気持ちを整えはじめていた。
そしてついに、我が家の愛犬を病院につれていく度にかかる往復のタクシー代の事を考えると新しい自転車を買った方が経済的という結論に達し、一昨日近くのジャスコの自転車売り場で新しいチャーリー君を購入した。
翌日に愛犬の病院の予約を入れてあったので、それを見越しての購入タイミングだった。またもやグットルッキングでしかも今回は折りたたみ式。新しいものは嬉しいもので、翌日うきうき気分でNEWチャリー君にまたがり、愛犬の診察へむかった。
確かに雲行きは怪しかった。 まさかと思ったがやっぱり降ってきてしまった。 しかも一瞬でかなり激しい大雨となった。
急いで近くのジャスコに逃げ入ったが、しばらくの雨宿りもむなしく、結局それ以上チャリで進む事ができなかった。 NEWチャーリー君をジャスコの駐輪場にとめ、やっぱりタクシーで動物病院へ向かうこととなってしまった。
あら?タクシーで行かないために購入したのに??
というわけで、デビューを華々しく飾るというわけには行かなかったが、新しいチャ−リ−君を迎えることができた。
でも、アンドリュー。
君の事は何があっても忘れない!
さらば、チャーリー・アンドリュー!
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