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2009/06/06(土) 勃起が止まらない
さっきから勃起が止まらない。
こう書くと私の股間でロマンティックな何かが毎度お騒がせしますしているように思われるかもしれないが、私の股間はロマンティックと言うより、黒人演歌歌手ジェロであり、その先端からはしばしば海雪が出ると専らの評判である。

それはそれとして問題は私の勃起である。もし私が国民的アイドルグループの一員であれば「勃起して何が悪い!」と啖呵を切るところだが、私は国民的アイドルグループでも国民的美少女でもなく、ザイール国民から熱狂的な支持を受けていた唯一の日本人男性に過ぎず、しかもそのザイールはもう無い。
今あるのは儚くも切ない私の勃起だけである。だがここで嘆いても始まらない。かつてわらしべ長者(佳彦)は、1本のワラから1軒の家を手に入れたと言う。
ならば私もわらしべ長者(佳彦)のひそみにならい、1本の勃起から1軒の家を手に入れてみせようではないか。

思い立ったが吉日とばかりに、私はグンゼのBODYWILDを脱ぎ捨て、街へと飛び出した。
窮屈さから解放された私の勃起は、初夏の日差しを浴びがら、自由を謳歌するように私の下腹や太ももをしたたか打ち始める。
パンパパン!ししおどしの要領でパンパパン!右見てパン!左見てパン!

そんなことを繰り返していると、どこからかウーウーと素敵な調べ。目を凝らしてみれば、鮮やかに回転する赤色灯がひとつふたつ、ファック!ファックジャパン!だがこの程度で動揺するようでは佳彦には程遠い。気づくと私は走り出していた。一体どこへ。

光の差す方へ。そして私は女子高生の集団にダイブし、その中心で愛を叫んだのである。
海雪も出したのである。

その後はまるでベルトコンベアのような流れ作業だった。逮捕→連行→取調べ→カツ丼→取調べ→カツ丼→カツ丼→取調べ→カツ丼→カツ丼→送検→カツ丼→取調べ→カツ丼→勾留→カツ丼→カツ丼→起訴→カツ丼→公判→カツ丼→カツ丼→判決→カツ丼。判決が下されたとき、私は逮捕前と比べて20kg太っていた。
痛風も発症していた。
だが依然として勃起したままだった。

それから私は巨大な建物の小さな部屋に入れられた。
せいぜい3畳と言ったところだろうか。窓側にはさらに1畳分のスペースがあり、手洗場と便器がむき出しで設置されている。窓を見ると鉄格子が嵌められていた。その瞬間、随分遠くまで来てしまったなという悔恨が込み上げた。ジェロとか言っていた頃が懐かしい。
佳彦は今頃どうしているだろうか。
結局のところ私は佳彦になれなかったのだ。
だがうつむく私の視線の先には見慣れぬ光景が待っていた。
股間はもう膨らんでいなかった。勃起は鎮まっていたのだ。そこではたと気づく。

私はすでに大きな家を手にしていたのだと。
冷たくも暗い巨大なこの家を。


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