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2006/08/26(土)
高村風、起床
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あゆりははぼんやりとした意識の表層でじっとりとした汗が全身を包み込んでいるのを感じた。手足は重く、それはまるで自分の意思とは無関係な、赤の他人の肢体のようであった。そして軽い喪失感のようなものが、眠りから戻ってくるあゆりの意識とともに漠然としかし確かに鈍い色を放ち始めるのであった。それは寝ている間にも頭蓋骨の内側に確かにこびりつき、意識が戻ってくるのを待ち受けていてた黒いコケのようだった。悪い夢を見ていた後味の悪さなのか、起きてから自分がやらなくてはならない何かに対しての不安が無意識の中で形を変えたものなのか。そのように彼女が意識の表層をさまよう時間の長さはとても長く感じられ、その漠とした意識ととうに明るくなってしまった窓の光が瞼のすぐ内側で次第に混ざり合っていき、やっと目が覚めるのであった。このように起床するのはもう何度目になるだろう。
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