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2005/07/23(土)
『姑獲鳥の夏』
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京極夏彦の名を世に知らしめた作品、『姑獲鳥の夏』の劇場化作品を観てきました。 話のあらすじは・・・
江戸時代から藩の御殿医として栄えてきた久遠寺医院で起こった 不可思議な失踪事件と、20ヶ月妊娠し続けていると噂される、 その医院の娘にまつわる謎を解いていくというもの。 原作はぶ厚い新書版ノベルで、実に濃い内容であり、 その長い物語をどうやって2時間余りの物語にまとめるのかが 見所だった訳です。が・・・
ここからは原作を読んだ人間の言葉として捕らえて下さい。
はっきり言って出来の悪い映画だと思いました。 原作のストーリー展開とエピソードを網羅する事に終始し、 映画独自の面白味というものがありません。 謎を解くヒントが散りばめられつつ、その物語の中心にいる 『関口』の視点で物語が進行する為、『京極堂』の謎解きまでは その核心が全く見えず、ラストでたたみ掛ける様に終結に向かうという、 『快感』を味わう事が全く出来ませんでした。 更に、硬い良く出来た画の中に中途半端な映像演出を加えている為に、 画造りにも違和感を覚えます。
ストーリーを追う事に執着したが為に、バックグラウンドの説明が曖昧で、 原作を知らない人にとっては、理解し難い部分が多々あると思います。 物語に登場するキャラクターも個性あふれるものである筈なのに、 映画の中では全然生きていません。 キャラクターの個性を表現する演出が一切成されていない為です。 役者は良い人材が揃っているのに、実に勿体無い事です。
せめてもの救いは原作のイメージを膨らませてくれる、 舞台装置の出来ぐらいでしょうか。 もう一つ、原田知世と篠原涼子の映画の中での雰囲気に物凄く近いものがあり、 配役としては成功してるな、と思えた事かと・・・。 それだけしか救いが無いというのも悲しい話ですが。
by克由紀 −次回予告 『フライ・ダディ・フライ』−
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