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2010/07/28(水)
第26回市民環境問題講演会(1)
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第26回市民環境問題講演会 2010/6/5 立川市アイム 水 俣 に 学 び、未 来 に 伝 え る (講演要旨) ―水俣から日の出処分場の問題を問い直すー 講師 原田 正純 先生 僕は医師なので、ごみのことはよくわからないのですが、水俣の話の中から皆さんの問題を拾っていただきたいと思います。 水俣病が正式に発見されたのが1956年の5月1日です。子どもがばたばたと倒れたので気が付いたんです。環境汚染によって被害が起きる時には、胎児や赤ちゃん、そしてお年寄り、もともと病気を持っている人などその環境に住む弱い人から出ます。 環境問題は、医師が出てくる前に対処しなければ意味がありません。正式発見の2年半前くらいに、猫が死んでネズミが増えて困るということが起こりましたが、これは人に問題が起こる前に自然界に住んでいる動物に問題が起こるとことを示しています。 環境汚染で病気が起こる時には、農村や漁村で自然と共に生きている人たちが真っ先にやられますから、なかなか中央まで声が届きません。一番象徴的な水俣病だけでなくて、長崎の五島で起きたカネミの事件もそうです。 東京のど真ん中で起これば、もう少し違った対応ができたと思います。 最初、原因が分からずにもたもたして熊大が原因を発表するまで2年半もかかりました。でも、原因が分らない時には、まず特徴を掴むということが必要ですが、それが意外と難しいのです。重症な患者ばかりだと何が特徴なのか分からないのです。そのうちに、感覚が鈍くなるとか、運動が円滑にいかないとか、視野が狭くなるとか、言葉が出なくなるといった症状が特徴だとなるわけですが、それにやはり2年くらいかかりました。20世紀初頭のイギリスで農薬工場労働者の有機水銀中毒の経験から書かれたハンター・ラッセルの論文を読んで、それから水銀を測りだすんですよ。 私の学生時代、衛生学で希釈放流という、毒は薄めて棄てろと習いました。しかし、薄まったものも濃縮するというのも自然界の働きです。名もない命と私たちの命が繋がっていることを水俣病は私たちに教えています。そのメッセージを、我々がこの50年間でどう受け止めてきたかが問われています。命は循環しているわけですね。 食物連鎖を通じて起った中毒というのは人類史上初めての経験です。そういう意味で水俣病は公害の原点と言われているんですね。それからもう一つは、胎盤を通しての中毒が起こってしまったということです。有機水銀、ダイオキシンなどは、胎盤を通っちゃうわけですね。これは大変なことなんです。そういう意味では、この水俣病という事件をもっと大事にしなければいけないと思うんです。被害者の人たちをもっともっと大切にしなければいけないんです。ところが、現実はどうですか。 胎児性の患者なんか補償金を貰ったからもうそれでいいじゃないかというわけでしょう?病気は治らないですよ。お金を貰ったって、そんなものは全く足しになっていないんですね。それが現実なんです。
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