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2004/09/23(木)
上野水上音楽堂アコースティックボイス1
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「ぐおぉがぁぎゃぃぃん！！あ痛たたたた・・」
朝６時、あまりの激痛に目が覚めた。や、やっちまったぜ、よりによってこんな日に。実は大阪を出る４日前から胃の調子が悪くて何度も胃けいれんをおこしていた。昨日の曼荼羅ライブの打ち上げで仕方なく少しだけ飲んだ酒があかんかったか？でも飲んだのはお子様が飲むようなピーチなんとかやで。ちっきしょう、大阪のあのヤブ医者め！この薬飲んどいたら大丈夫や言うたやないか。酒も飲めへんかったし、油っこいもん食えへんかったやんか。今日のために節制してたやろ。
「あ、あー、またきた。ぐおがぎぃぃ〜ん」
のどから手を突っ込まれて胃を絞り上げるような痛みが何秒間か続く。そして潮が引くように痛みが消える。何秒かたつとまたさらにひどい痛みがぶり返す。これが延々と繰り返される。言葉も出ないし体も動かせない。とにかく激痛だ。これはもう拷問にひとしい。おまけに下っ腹の調子もおかしくなってきた。
「う〜、淳ちゃん、たのむ、どこかトイレ連れてってくれ〜」
「おう、大丈夫か？すぐそのへんのコンビに探すからな」
心配そうにとよだがのぞき込んでいる。ごめんな、こんな大事な日に。ちっきしょう、この痛みさえ止まったらええんやけどな。９時には上野に行って機材の搬入を手伝わんとあかんのに。あ〜神様、仏様、もう悪さはしませんから許してください。お釈迦様にキリスト様、アラーの神よ、森に住む精霊たちよ、山の神に海の神に大黒様に恵比寿様に、えーっとそれからビリケンさんにコロボックルに・・とにかくお願いします、助けてください！
上野に着くまでに何度もトイレに行き、胃の激痛と戦い、神様に祈り続けたが神様は誰ひとり助けには来てくれなかった。やっぱり神様なんて絶対信じてやるもんか。
「おはようございま〜す、お久しぶり、ようこそ」
上野水上音楽堂で主催者の井上くんが笑顔で迎えてくれた。もう搬入がはじまっていてスタッフをはじめ、みんな忙しそうにしている。
「お、おひさしぶりです。き、今日はよろひくほねふぁいしま〜す」
何をしゃべっているのかも分からない状態になっている。
「淳ちゃん、俺の分までたのむわ、動かれへん」
「おう、とにかく車の中でじっとしとれよ、体を使う仕事ならわしにまかせとけ」
く〜ほんま、ええやっちゃのう。実はとよだも体調が悪くて、両手ににひどいジンマシンが出て病院に通っている。今回は二人とも健康保険証と薬持参の病人ツアーや。老人か、わしらは？みんなには申し訳ないと思いながら午前中はトイレと車を何回も往復し車の中でぶっ倒れていた。くっそう！もう頭に来た！痛み止めを５錠いっぺんに飲んでやる。それであかんかったらもう上野で入院してやる。こんのやろう、もうどうとでもなれ！
そろそろリハもはじまる頃や。出演者らしき人たちが集まってきている。ちゃんと挨拶しとかんと、と思うんやけどそれどころやない。腹を押さえて横になっていると、男か女かわからんような怪しいでかいやつが不思議そうに俺をのぞき込んでいた。目がかすんでよく見えんけど、誰やお前は？スタッフらしくもないし、まさか出演者でもないやろ。公園からまぎれこんで来たんかな？保護者とはぐれたんか？ほんま東京っていろんなやつがおるな。まだ胃がじくじくするけどなんとかなりそうやな。やっぱ５錠が効いたかな。もうちょっとだけ横になっとこ。とよだはどこにいったんやろ？人間て弱ってる時にすごく心細くなるもんやな。こんなときに優しい言葉をかけられたら男はイチコロやで。ほんで後で大失敗するんやな。世の男性諸君、心当たりがあるでしょ？
さて本番。トップのナミゴコチさんのウクレレと歌声が聞こえてくる。だいぶ痛みが引いてきた俺は客席の端に座り込んでいた。大丈夫、大丈夫や、と何度も自分に暗示をかけている。幸い俺たちの出番まで時間はまだある、なんとかいけそうや。
「ステージの上から水の中に飛び込む予定やったけどどうする？」
「せっかく大阪からきたんやからそのくらいせんとな」
実は大阪で今日の作戦をいろいろ練ってきていたのだ。
「さっき水の中見てみたら苔でずるずるやで、しかも浅いし」
「くやしいな、でも飛び降りたときにショックで洩れたらあかんしな」
「しゃあないな、今日は俺様がステージでしゃべりまくってやる」
いつもしゃべりまくっとるやないか？まあ今日はたのむわな。
出番前に楽屋で待機。俺たちの前のＭＩＮＡＭＩ＆中内計の演奏が始まった。
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