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2004/05/14(金)
城北公園にて
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俺たちは城北公園でよく練習している。いつもは酔っ払いや若者達がたむろしているのだが、今夜は誰もいないみたいだ。夜空も星がきれいに輝いている。とよだがうれしそうな顔をしている。そういえばギターケースがいつもと違っている。
「たがみちゃん、ええもんみせたろか?」 またか?こいつのええもんてろくなもんがない。 「これや、65年のファイヤーバードじゃ!どうじゃ!」 「どうしたんや?ええやんかこれ、いつも金がないないっていうとるくせに、盗ったんか?」 「あほな事言うな、さすらいのローンレンジャーとは俺様のことや」 「また何とち狂ってんのや、そんな金があるんならたまには俺におごれよな」 「それとこれとは別や、わしがローン組んで、酒はわしがおごってもらう」 「何でやねんな!何で俺が酒おごらなあかんねんな?」 「ステージでええ音ださんとあかんやろ?せやからええギター買わんとあかんのや」 そりゃあそうやけど。しかしこれで何本目のギターや。しかも今日鳴らすのはミニアンプやろ?音わからへんがな。 「かっこええ、かっこよすぎる。わしにぴったりや」 「何本ギター持ったら気が済むんや、どうせステージでは1本しか使わんやろが」 「そりゃそうやけど。わしも手が6本欲しいわ、わし一人でツインギターでもトリプルでも弾けるのにな、酒の肴もいっぺんに6種類食えるしな」 あほらして話しにならんわ。だいたい手が6本っていう発想がな、お前はタコか?。いっぺんに肴が食えるって口は一つしかないやんか。もうええから練習しようで。
俺たちの練習を野良猫が聞いている。すると突然とよだが演奏をやめて走り出した。どこ行くねんな?また何を始めるんや?木の上に逃げ出した野良猫を追いかけてとよだが木に登りだした。なあ、ちゃんと練習しようや、歳いくつなんや?あ〜あ、もうだめだ。とよだ対野良猫のバトルを眺めながらを俺も一服しようっと。とよだと猫はにらみ合っている。わしらここにいったい何しにきたんや?。
戦い終えて30分後・・ 「この前のミノヤホールのライブ、面白かったけどなんか疲れたな」 「おう、あんだけいろいろ制限されたらな、時間も40秒オーバーやて」 「たった40秒やで、しかもステージで酒飲んだらあかんてなあ」 「おまけに椅子の上も立ったらあかんのやて」 「まあ、あそこのシステムを守らんかったわしらが悪いんやけどな」 「わかってないよな、俺たちのこと」 「そうそう、だいたいわしらに約束事を守れっちゅうのが無理やんか」 「そうや、そんなんちゃんと守れるんやったらこんな事しとらんわい」 「ほんまや、学校だって中退しとらんちゅうに」 「まっとうな人生を歩んで今頃家の一軒でももっとるわい」 「だいたい昔は音楽するやつは不良って決まってたんや」 「そうや、ロックはドラッグ、セックス、アルコールやろが?」 「そやそやライブミュージシャンがええ子ぶってどないすんねんな!」 「だいたいみんな髪が短いのが気に入らん」 「わしゃあステージにカテキン入りのお茶飲んどる奴の気が知れん」 「良い子は家でしょんべんしてさっさと寝ろ!」 「ほんまや、音楽発表会じゃあるまいし、好きにやらせたれや!」 ・・・どこまでエスカレートするんだ?まあええか、ええライブやったし、お客さんも喜んでくれとったみたいやし。
「そやけどお客さんは温かいし若い子も多かったな」 「場所も梅田から近いし、ええ箱はええ箱やで」 「約束事さえ守れたらな、わ・し・ら・が」 「守ったらぁ、わしら、お・と・な・やからな」 「また8月頃にやらしてもらうか、マイチェアー2つ持ってな」 「おまけにお茶のペットボトルに焼酎入れてな」 「次回は打ち上げ花火でもあげたろかいな」 「そりゃあやりすぎやで、せめて素っ裸になってケツ出したろ」 「おう、それがええわ、ミノヤの決まり事を全部ぶち壊したら、がははは」 「ほんまや、わしらは天下のたがみ★とよだ様やで?」 「そうやそうや、わしらを枠にはめようなんて大間違いや」 「・・とかいって、行ったらよろしくお願いしま〜すなんて言ったりして」 「ミノヤホールばんざ〜い、くらい言うとったらええやろ、がははは」 「ほんまや、ぎゃははは」 どこが大人や?
結局練習もそこそこで馬鹿話ばかりしていた。遠くでそれを眺めながら野良猫は逆襲のときをひそかに狙っていた。しかも仲間を引き連れてきている。すると馬鹿話の途中でとよだはまた急に猫に向かって走り出した。フンギャァ〜!ギャ〜オ〜ン!こらまて〜! ・・・城北公園でのとよだ対野良猫の戦いはまだまだ続いている。
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