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2004/12/18(土)
ギブソンJ-45自爆事件
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「絶好調や!リハもええ感じで終わったし、今日の出番は一番最後や。ゆっくり焼酎でも飲んで作戦を練ろうぜ」 「久しぶりやな、この箱。相変わらずええ感じの箱や。ちゃんとバーもあるし、もっと飲んでテンションあげていこうぜ」
リハを終えて店のバーでとよだと気持ちよく飲んでいた。今日はIKUOが呼んでくれたアコギのイベントだ。久しぶりに会ったIKUOも元気そうやったし、謎の偽教師も相変わらずのお調子もんだ。 もうこれで何杯めやろ。なんかえらい調子ええな、今日は。とよだもがんがん飲んでいる。
「おねえちゃん、焼酎おかわり。えっと氷は2個でええから焼酎をグラスになみなみとな」 「どこからみてもべっぴんさんやな。俺もおかわりや、なみなみとやで」 「またそんなうまいこと言うて、ばれたらオーナーにおこられるわ」 「大丈夫や、その二階堂といいちこ半分ずつ混ぜて出してくれ、なみなみやで、ばれへんて」 「おっちゃんらにまかせとき、空になったボトルに水入れといたるから」 「はい、500万円ね」 「くー、言うなあ、さすがやな。チーママかお前は」 「年、何ぼやねん、まあ一杯のめ」 「ええ店やのう、おねえちゃんいつもここにおるんか?」 「このプリンチョコむけんがな、むいて口に中に入れてくれ」 「わしもじゃ。わしゃあ、このピーナッツを口にたのむ」 「俺らの本番、絶対見てや、その間このバーは休業中や」 「ほんまにねえちゃんが見に来るまで始めへんからな」 「オーナーには俺たちがちゃんと言うて聞かしとく」
・・・わしら一体何者や、ただの酔っ払いやんか。ここに何しに来たんや?ショットバーはいつしか二人のエロおやじとチーママの場末のスナックと化していた。もうライブはとっくに始まっている。ええ感じに酔いも回ってきた。たがとよの爆裂トークはえんえんと続いている。
「おい、そろそろ出番やで、この次やろ」 「よっしゃ、今日もええライブやるど。思いっきり燃えまくって盛り上げてやる」 「ねえちゃん行ってくるわ、ちゃんと客席の一番前で見とれよ」 「よっしゃ、ほんなら一発ぶちかましにいこか」 ちょっと飲みすぎた二人はえらい余裕をかましていた。
・・楽屋で 「弦は張り替えたし、チューナーは持ったし、忘れもんないな」 準備万端、すぐ出れるようにギブソンをテーブルに立てかけた。 「あと一曲で終わりみたいやな、まあ一服してと」 「ちょっと客席見てくるわ」とよだが客席をのぞきに行った。
タバコに火をつけて一服ふかしたその時、俺の視野のかたすみにありえない光景がよぎった。俺のギブソンがゆっくりと、まるでスローモーションのように床に向かって倒れていった。そして確かにその瞬間、時間は止まった。
「バーン!!」 何??何事や??何があったんや??? 見ると無残にも張りかえられたばかりのJ-45のネックが真っ二つに折れていた。 「あ、ありゃりゃ〜、な、なんじゃ、こりゃあ〜???」 「ど、どうしたんや!」とよだが飛んで来た。 「ね、ネックが。・・・お・れ・た!」 「な、なにー!!」 「ネックが折れてぶらんぶらんになっとるわ、がははは」 「あ、ら、ま〜おめでとう!おほほほ」 笑い事やないで、もう本番やで。せっかくリハで作った音も台無しや。とにかく誰かにギターを借りないと。出演者のみんなが集まって来てくれた。みんな心配そうな顔をしている。
「大丈夫や俺たちは逆境に強いからな。えへへへ」・・強がり。 「こんなことはようあることや。だははは」・・目が点。 「よっしゃ、とにかくギター借りてやっちゃおうぜ」 「おう、みんな心配かけてすまんのう、気にせんといてくれ」 「わしら、どんなことがあっても一番カッコええバンドやからな、みんな見とれよ〜」・・え〜ん、え〜ん。
音は混ざらないしチューニングは狂いっぱなし、おまけに途中で音は消えるし、弦は切るし、借りたギターは俺が弾くから傷だらけ。出演者のみんな、ごめんな〜。でも本人たちはノリノリだ。 なんか壮絶なライブになってしまった。まあお客さんも喜んでくれてるみたいやし、今日はこのぐらいでかんべんしてやるわ。どうだ!どうだ!どうだ!!もうとことん飲んでやる〜!
・・・本当に勘弁してほしいのは俺だった。みなさん、ギターの取り扱いにはくれぐれも気をつけましょう。
ごめんな、俺の愛するJ-45。絶対直してやるからな。
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