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2003/03/31(月) 豊田淳一との出会い
とよだとの出会いは、もう10年くらい前になる。初めて出会ったのは梅田のギルドっていう小さな箱だ。
今はもうなくなってしまったけど、その怪しげな地下アジトみたいなライブハウスには当時結構すごい奴らも出てた。

俺はいつものように悲しいラブソングを歌ってた。何にも分かっちゃいないのに、分かった顔して愛やら恋やらほざいてた。
客席はいつも女の子でいっぱいだった。
その夜のライブも気持ちよく歌ってるとき、目の前に体のでかい髪の長い変なやつがどかっと座って真剣に聞き入っていた。
まわりは女の子ばっかりなのに一人だけ浮いている。
俺のファンにはこんな奴はおらんど?
でもどう見たって音楽やってる奴みたいやけど?

その変な奴、俺の最後の歌が終わるまで真剣な眼差しで俺を見つめてる。
ひょっとしてあれか???でも俺そんな趣味ないで。かんべんしてくれよ。

ライブが終わり事務所にいくとそいつがいた。
でかい声ででかい態度で喋ってた。狭い事務所がますます小さくなってた。
ブッキングの今富君が、そいつを紹介してくれた。

「たがみさん、こちらゴールドラッシュのとよださん。今日たがみさんのライブ聞きに来てくれたんやって」
「いやぁよかったですよ、感動しましたよ」
(女々しい歌うたいやがって、この野郎!)
「いえいえどうも有難うございます」
(ほんまに感動したんか?女の子ばっかり見とったんやないんか?)
「いまからどうすんの?帰んの?」
「いや別に用事はないけど、一杯いく?」
「いく、いく、い〜く〜、いっちゃう〜!」

一発で意気投合した二人は朝まで飲みたおした。何を話したかもう覚えてないけどあの言葉だけは覚えてる。
「たがみちゃん、(もうたがみちゃんになっとるし)よかったら俺ギター弾かせてくれへんか?」
「おう弾いてくれ淳ちゃん、(もう淳ちゃんになっとるし)今度バナナでワンマンやる事になっとんのや」
「ほんならバンドのほう、俺にまかしてくれんか?」
「おう、好きなようにやってくれ、まかしたで」
「よっしゃ、おもろいことになりそうや」
「ほんまや、おもろうしようや」

それから俺たちの腐れ縁は続いている。
バンドも名前もメンバーもいろいろ変わった。すごいメンバーにも恵まれた。
音楽の方向性も変わったけど本当の自分が出せて感謝している。
全部あの時の、とよだとの出会いが始まりや。いつかバンドのほうも休止して、結局今ふたりだけでやっている。お互いがお互いのせいにしている。
「おまえの性格がわるいからじゃ!」
「よういうわ、おまえの性格が悪いのと、顔がでかいからじゃ!」

いつも言い合いながら、一緒にお酒を呑んでいる。暑い夏、酔っ払っては真夜中に二人で素っ裸になって小学校のプールで泳いだ。寒い冬、帰るのが嫌で毎日ふらふらになるまで飲み明かした。

もう10年くらいにになる。でも気持ちはあの出会った時のままだ。これからもきっとそうだろう。
「淳ちゃん、今日も一杯いっとこか?」
「おう!たがみちゃんのおごりでな!」 またかよ!!


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