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2003/12/07(日)
芸術劇場
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NHKの芸術劇場をよく見る。今日はスイスで行われた音楽祭のやつだった。アルゲリッチとキーシンがモーツァルトの連弾用ソナタを連弾していた。まるで母と息子のような絵であった。アルゲリッチて女は、こりゃもうヒドいじゃじゃ馬である程度悪名も高く、ショパンコンクールに優勝したときにはもう結婚して子どもも居たという。そして一時期は、モントリオール交響楽団を世界的レベルにまで鍛え、NHK交響楽団の音楽監督としてガンガン鍛えたシャルル・デュトワと夫婦であった時代もあった。そして共演者とは必ず懇ろになる、という、いわゆる悪女のたぐいに数えられるピアニスト、というのが世間一般での捉え方のようだ。この人の演奏はとくに好きとか嫌いの域ではない。人物的には、ここ数年で非常に好きになったと思う。年いって、もう完全に「母」なのですな彼女は。今日のキーシンとの連弾も、演奏テクニックも手の形も姿勢も目線も、完全にオカンであった。ときどきアイコンタクトを交わすあたり、普通は何だか淫靡な感じになるのであるが、本当に2人とも楽しそうに幸せそうに弾いていたなぁと思う。カメラがいい角度で撮っていたと思う。母と息子が一つのピアノで一冊の楽譜を見ながら、同じ時計を頼りに弾いている、という感じだ。連弾だけでなく、1人以上で演奏する音楽は、見た目以上に、ものすごく意志疎通を図らないとイカンのだ。じっさい目と呼吸で絶え間なくコンタクトをとっている。相手がどんなにイケ好かぬヤロウであろうとも、連弾なり何なりすると必ずその瞬間は心が通じるんである。
さーて、続きを見ましょーかねー。次は4台のピアノのための協奏曲なのさ。 4台もピアノ並べたら舞台の床抜けるわ。
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かわいそうなプレトニョフ。 4台のピアノのための協奏曲はすばらしかった。これはピアノ用でなく「クラヴィーアの為の」というやつで、とくにピアノと指定していない。なのでたいていチェンバロ4台で演奏されるものばかり。今日はピアノが本当に4台並んで壮観だった。管弦楽は特別に結成されたバースデー何タラという人たちで、その中にはチャイコフスキーコンクールのヴァイオリン部門で最高位をとった川久保賜妃が入っていた。ミッシャ・マイスキーもチェロで入っていた。夢のような共演だった。 さて、プレトニョフがどのようにかわいそうであったかというと、この人は顔がとても無表情なんである。4台のピアノを弾いたのは、アルゲリッチとキーシンと、ジェームス・レヴァインという人と、ミハイル・プレトニョフなのだけど、カメラがアルゲリッチとキーシンばかり撮っていたので、プレトニョフがほとんど写っていないのだ。写りはするが、その写り方があまりに不憫であった。顔と手元に一応カメラが合わせてあるが、アルゲリッチの手元を撮っている向こうにプレトニョフがコツコツ弾いているのがボンヤリ見えているのだけど、プレトニョフの手元のカメラがアクティブになると、その時プレトニョフはあまり弾かない部分を担当している。顔はどこまでも無表情。まるでサボッているかのように見えた。かわいそうだ。場所的におそらくプレトニョフがコンサートマスター的な役目だったと思うのだけど、あれを見る限りプレトニョフだけが全然弾いていなくてサボッているのだ。弾いているときには撮られてなくて、弾いてないときだけ撮られる彼は気の毒だった。しばらくそれがプレトニョフだと気づかないほど存在感が無かった。南無阿弥陀仏。
それにしても川久保賜妃は半年でよくあれだけ太ったものだ。
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