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2003/06/10(火)
"ハッピーの回想日記"から(4)
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* 危機
ハッピーの状態を見届け、重い足取りでその場を去りました。 次の日もハッピーの様子を見に行きましたが、犬小屋にいません。 そして近所のM さんから、ハッピーが入院した事を聞きました。
M さんはハッピーを子犬の頃からよく知っていて、"ハッピーが子犬の時は飼い主 さんは時々ハッピーを家に入れたりしてかわいがっていた。"と教えてくれました。 M さんもわんちゃんが好きでご夫妻で2匹飼っており、ハッピーの飼い主さんが 泊りがけの旅行にでかけてしまうと残されたハッピーの事を気にかけて面倒を見て くれます。
ハッピーが入院した所はM さんちのわんちゃんも行く動物病院で、前にハッピーと その付近を散歩した事がありました。 私はハッピーの容態が心配で、病院にハッピーの様子を聞いてみる事にしました。 -----
* 入院
電話口に獣医さんがでたので、入院しているハッピーの状態を尋ねてみました。 すると飼い主さん以外にハッピーの事は教えられないような口ぶりでしたが、 こちらが詳しく事情を話すと親切に応対してくださいました。
"ハッピーは肝臓をひどくやられていて、意識が無い。何とか点滴でもたせているが、 ここ一週間が危ぶまれる。"と聞き、とても胸が痛みました。 "あんなに元気だったハッピーがこんな風になろうとは。もしもの事があったら。" 等といろいろ考え続け、夜になっても悲しみの淵から抜けられない日が続きました。
その後2、3日間は電話でハッピーの様子を聞いていました。 意識が少し戻って命はとりとめたものの、決して良い状態でないようです。 ハッピーは相変わらず、点滴をして生命を維持していました。 -----
* 治療費
ハッピーが入院してからの毎日、私はとても悲しくて心配ばかりしていました。 そして"一度、ハッピーのお見舞いに行ってこよう。"という思いにかられました。 動物病院は歩いて25分位の所にあります。 初めてそこを訪ね、担当の獣医さんにお会いしました。
すると"飼い主さんがたった今、車でハッピーを連れ帰った。" と言われ、私は びっくりしました。 "入院はまだ必要なのに、治療費がかさむからという理由で飼い主さんが無理やり ハッピーを退院させた。" "ハッピーは飼い主さんのことがわからず、今にも噛みつきそうな状態であった。" と聞かされました。
そこで、私は獣医さんに"これから、ハッピーはどうなっていくのですか?" と尋ねました。 獣医さんは少しためらいがちに"ハッピーは記憶喪失の状態なので回復の見込みが 無い場合、もしかすると飼い主さんはハッピーを保健所に渡してしまうかも しれない。"と言われたので、私は"本当に大変な状況になってきた。"と不安な 気持になりました。 -----
* 記憶
病院を去って行ったハッピーの事が心配だったので獣医さんに、これからも ハッピーの相談にのってくださるようにお願いしてハッピーの様子を見に行き ました。 あたりはもう闇に包まれていて、外の犬小屋にハッピーは戻っていました。
入院前にその場所で、私がハッピーに会った時と同じ様な顔つきをしていましたが 少し険しさも混じっていました。 恐らく、なじんでいた病院から無理やりここに連れてこられたからでしょう。 ハッピーは勿論、私のこともわかりません。 "ハッピー !"と声を掛けながら、私は小屋の中に手を差し出してハッピーを 呼ぼうとしました。
この時ハッピーは初めて、私に対して"ウウッ !"と怒りの表情を見せました。 見も知らない人[私]が自分の縄張りに侵入してきたからです。 私はさっと手をひっこめ、記憶を失ってしまったハッピーを悲しげに見つめて いました。 -----
* 病気
ハッピーが入院していたのは3日間でした。 こうしてハッピーは自分の小屋に戻ってきましたが、それは悲しい退院という べきものでした。 私は無表情のハッピーの姿を目にし、どうすることもできないまま我が家へ 戻りました。
翌日の夕方遅く、再びハッピーに会いに行きました。 犬小屋すれすれに木板と自動車が置かれていて、その狭い場所にハッピーは寂し そうに後ろを向いて"お座り"していました。 かわいそうな事につながれているハッピーの鎖は30pも無く、身動きができない 位に短いものでした。
それは私には飼い主さんがまるで病気のハッピーを小屋に閉じ込めて、人目に 触れさせないようにしているとしか思えませんでした。 私は生い茂った庭の横手からハッピーに近寄って、"ハッピー !"と呼び掛け ました。 昨日の厳しさの表情はハッピーから消えていましたが、そこにいるのは魂の 抜けた顔をしたハッピーでした。 -----
* お話
ハッピーが退院してきてからの1週間、私は毎晩ハッピーに会いに犬小屋へ 行きました。 12月も終わりに近付いてきて、あたりは真っ暗でとても寒い毎日でした。 それでも遠い街灯でハッピーの姿は見えました。
ハッピーにしてあげられるのはただ"ハッピー、ハッピー !"と辛抱強く呼び掛け、 何かのきっかけで元気なハッピーに戻ってくれるのを待つ事でした。 飼い主さんはもう家に帰ってきていますが、ハッピーがいる場所は隔離された様に 離れているので私がハッピーに話し掛けていても気がつかれないし、迷惑にも なりません。 懸命にハッピーに呼び掛ける事を続けていると、ハッピーとそこにいた時間は 40分以上にもなっていました。
いつもハッピーの事を気にかけてくださっているM さんはそうしている私の姿を、 わんちゃんと散歩していた時に目にしたと言っています。 M さんご夫妻もハッピーが元気になってくれる事を願っていてくれました。 そんなM さんと真剣に"今後ハッピーが回復しない時はハッピーを引き取りたいが、 飼い主さんは恐らくそうしてくれないのではないか。"と話し合ったものです。
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