|
2008/09/01(月)
【福田退陣】なぜ、この時期に…「国民が一番困る」
|
|
|
内閣改造からほぼ1カ月。福田康夫首相が1日夜、突然辞任を表明した。「筋道はできた。新しい布陣で政策を実現していく」。福田首相は辞任の理由を会見でこう説明したが、国民は理解に苦しむばかりだ。「とにかく驚いている」「なぜこのタイミングなのか。無責任だ」…。幹部の言葉からもわかるように、“寝耳に水”の退陣。自らの改造内閣を「安心実現内閣」と命名した福田首相の唐突な辞任表明で、内外に衝撃が走った。
声が震え、視線も泳いでいた。記者を見回す。 「本日辞任することを決意いたしました」 首相が辞任の事情を説明する言葉に、詰めかけた記者はメモを走らせた。 午後9時半。福田首相はこわばった表情で切り出した。「(安倍晋三前首相から)バトンタッチして以来、次から次へと、積年の問題が顕在化し、処理に忙殺された」。時折、感極まったように言葉が詰まる。 政権維持をかけた内閣改造からわずか1カ月。「安心実現内閣」「国民目線の改革」の約束は何も実現しなかった。 記者から「安倍前首相も政権を投げ出した。政治不信が巻き起こる」と追及されると、「全く安倍前首相とは違う。健康問題はない」と一瞬気色ばんだ。 自民党本部では職員から「何か1年前のデジャビュ(既視感)のようだ」との声が漏れた。 「龍蛇無鱗」。福田首相はわずか3日前の先月29日に配信した福田内閣メールマガジンに、自らの好きな言葉をこう書き込んでいた。 「いくら立派にみえる政策でも、そこにひとつの嘘(うそ)があれば、国民の目はごまかすことができないということです」 福田首相は故事成語の意味を説明した上で、「来月(9月)には、いよいよ国会が始まります。消費者庁を作るための法案や、物価高などに直面する国民生活の安心を実現するための経済対策など、安全・安心を守るための政策や国際協力のあり方について、しっかり議論しすみやかに実施に移します」と意欲をみせていた。 その矢先の辞任。年金問題、C型肝炎訴訟問題…。 昨年9月26日に首相に就任してからの1年を振り返りながら、福田首相は辞任に至った理由を訥々(とつとつ)と説明した。就任当初の時期について福田首相は、「積年の問題が顕在化した」と難問が山積していたと振り返った。 だが、腑に落ちないのはなぜこの時期に辞めなければならないかだ。 これに対し、福田首相の口からは「政治的空白を作る訳にはいかない。新しいリーダーの元で実質審議入りする前のタイミングを図った」との説明しかなかった。 福田首相が1年ももたなかったことについて、各方面に動揺は広がるばかりだ。 北朝鮮が拉致被害者の再調査に応じることで合意した中での辞任に、家族会代表の飯塚繁雄さん(70)は「無責任極まりない。『(拉致問題を)自分の手で解決したい』との約束は何だったのか。情けなくなる。やり遂げないうちに逃げ出した」と話した。 福田首相も激励に訪れた岩手・宮城内陸地震の被災地で仮設住宅に暮らす宮城県臨時職員、三塚ひろみさん(33)は「福田さんは復興に全力を挙げると言っていたのに」。 海上自衛隊によるインド洋での給油活動延長問題が臨時国会で議論される予定だった防衛省。海自幹部は「政治が決めることだが、政権が混乱すれば給油活動はどうなるのか…」と不安を口にした。
|
|
|
|