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2008/11/19(水)
元厚生次官ら連続殺傷 犯人像は?謎多く…
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■血痕付き足跡100メートル 犯行声明なく
元厚生事務次官の経歴、宅配業者を装った犯人、ためらわずに刃物で殺傷する手口…。さいたま市と東京都中野区で起きた連続殺傷事件の犯行現場を結びつける共通点が次々に浮かび上がり、警察当局は同一犯による連続テロとの見方を強めている。一方、テロ事件に付きものの犯行予告や犯行声明は確認されず、多くの謎が残ったままだ。「単独犯か複数犯かの見当もつかない」(捜査幹部)。警察当局は前代未聞の事件捜査に戸惑いながら、犯人像の絞り込みに全力を挙げている。
≪恨み?テロ?≫
年金問題をはじめとする厚生労働行政への恨み−。山口剛彦さん(66)と吉原健二さん(76)の経歴から、もっとも導きやすい犯人の動機だ。年金記録問題、後期高齢者医療制度…。実際に、近年の厚労省は世間の強い風当たりを浴び続けている。
2人は旧厚生省でエリートコースの年金局を歩み、昭和60年前後には上司と部下の関係で現行の基礎年金制度を構築。ともにトップの事務次官まで上り詰めた旧厚生省を象徴する存在だった。同僚らは「恨まれるような人柄ではない」と話しており、なぜ2人の家族が狙われたのかは不透明だ。吉原さん以降の事務次官も10人以上いる。
個人的動機でないとすれば、特定の思想に基づくテロ行為になるが、報道機関などへの犯行声明やインターネットでの犯行予告は確認されておらず、動機がつかみきれない。
そもそも犯人は2人の自宅をどのように割り出したのか。吉原さん宅はインターネットで検索することができたが、山口さん宅はNTTの番号案内にも登録されておらず、旧厚生省の名簿などを入手しなければ特定は難しいと思われる。
≪共通項は宅配≫
30歳ぐらい、身長約160センチ。宅配業者の制服のような服装に野球帽。
現時点で明らかな犯人像は、吉原さんの妻、靖子さん(72)が病院に運ばれる際、警察官に打ち明けた男の特徴だけだ。山口さん宅の玄関に本人の印鑑が残っていたことから、犯人が靖子さん襲撃と同じ手口で宅配業者を装い、ドアを開けさせた疑いが強い。
山口さん夫妻と靖子さんが襲われたのは、ともに自宅玄関内。山口さん夫妻は胸に深い刺し傷があり、靖子さんは胸を数カ所、背中を1カ所刺され、一部は肺まで達していた。いずれも犯人が明確な殺意を抱いていたことを裏付ける。
山口さんの妻、美知子さん(61)に犯人と争った際にできる傷がなく、山口さんの腕に抵抗した傷(防御創)が多数あることから、美知子さんがドアを開けた直後に無抵抗のまま刺され、後から駆けつけた山口さんが続けざまに襲われたようだ。
凶器の刃物はともに見つかっていない。一方、2つの現場から60〜100メートルにわたって血痕の付いた足跡を残すなど、ずさんな一面ものぞかせている。
埼玉県警が山口さん宅周辺で警察犬に血痕を追跡させると、自宅の東約100メートルで追うのをやめた。徒歩で逃走した犯人がこの地点で車に乗り換えた可能性も浮上している。
一方、靖子さんが襲われた18日午後6時半前後に、自宅方向から一方通行路を速度を上げて走り去る黒っぽいワゴン車が目撃されていたことも判明。警視庁は現場周辺の防犯カメラの映像の分析を進めている。
犯行時間帯も共通している。山口さん夫妻は18日午前10時15分ごろに刺殺された状態で発見されたが、17日午後6時半から6時50分の間に、近所の男性会社員(30)が、山口さん宅から男性のうめき声を聞いており、夫妻が襲われたのも夕方の時間帯である可能性が高いという。
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埼玉県警は19日、司法解剖の結果、山口剛彦さん(66)と妻、美知子さん(61)の死因はいずれも胸を刺されたことによる失血死だったと発表した。
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