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2008/10/10(金) 巨人連覇!セ界最大の大逆転で原監督奇跡舞い
伝説をつくった!優勝マジック2としていた巨人は10日、ヤクルトに勝ち、2位の阪神が横浜に敗れたため、2年連続32度目のリーグ制覇が決まった。3度目の優勝となった原辰徳監督(50)は8度宙を舞い、目を潤ませた。阪神に最大13ゲーム差をつけられたが、信念の采配で補強と育成を融合させ、セ・リーグ最大の逆転劇を成し遂げた。巨人は日本シリーズ切符をかけ、クライマックスシリーズ(CS)第2ステージで阪神、中日の勝者と対戦する。

 信念を貫いてよかった。ライバルの試合が放映されたビジョンを見つめる目には涙が光っていた。ヤクルトに勝利した17分後、阪神が横浜に敗れた。喜びを爆発させるナインとは対照的に、感極まった原監督はゆっくりマウンドへ。頼もしさを増した選手らの手に、その身をゆだねた。チーム初の神宮での胴上げ。1回、2回…。背番号88が小雨に煙る夜空に8度も舞った。プロ野球史に残る大逆転でのリーグ連覇。奇跡のシナリオが完結した。

 「凄い選手たち。最後まであきらめず戦ってくれたメンバー。まさに歴史をつくり、伝説をつくってくれたと思う。胴上げ?天にも昇る感じです」

 険しい道のりだった。球団はリーグ連覇に向けてオフに大補強を敢行。優勝以外は許されないほどの巨大戦力を任された。だが、オフに手術を行った小笠原、阿部ら主力が故障や不振で開幕5連敗。勝負どころで選手がミスした際、温厚な指揮官がベンチのイスを蹴り飛ばしたこともあった。

 投打でどん底の状態だった4月中旬。06年2月に他界した藤田元司元巨人監督が眠る都内の寺院を訪れた。恩師の墓に手を合わせ、3カ月前の自らの言葉を思い出した。

 藤田元監督の命日はキャンプ期間の2月9日。今年の三回忌は原監督が列席しやすいよう親族が配慮し、1月25日に行われた。その席で関係者に「オフの手術組は大丈夫?」と質問された指揮官は「仮にケガ人が出たら神様が“若手を育成しろ”と言ってるんだと思い頑張る」と返答。続けて「今年はポストシーズンを見据え、9、10月にピークを持っていく」と語った。06年は開幕ダッシュに成功するも4位。昨年はリーグV後、CSで中日に敗れた。過去2年の教訓を生かした“日本一奪回プラン”だった。

 6月下旬まで勝率5割前後に低迷し、7月9日で阪神と最大13ゲーム差。渡辺球団会長が「3位でCSに出ればいい」と発言したこともあった。それでも原監督の“Vプラン”は揺るがない。開幕戦で右ふくらはぎを痛め2軍落ちした二岡に十分な調整期間を与え、19歳の坂本を遊撃で固定。昨季は9本の先頭弾を放ちながら腰痛を抱える高橋由にも無理をさせず、亀井、鈴木尚ら生え抜きにチャンスを与えた。投手はキャンプで急成長した育成枠出身の左腕・山口と、3年目右腕の越智を積極起用。1軍の主力は数試合ごとに休ませた。

 夏場からチーム状態は上向き、原監督が“勝負機”と設定していた9月。チームは最高の状態になった。小笠原の打棒が爆発し、ラミレス、グライシンガー、クルーンの外国人トリオも額面通り活躍。俊足巧打の鈴木尚は12年目で1番・中堅に定着し、中継ぎでは山口が2ケタ勝利を挙げた。チームの勢いを持続するため、指揮官は監督賞を連発。遠征先で主力を食事に誘い、マネジャーに「若手に飯を食わせてこい」と食事代を渡した。32年ぶりの12連勝を飾るなどハイペースで白星を重ね、10・8の阪神との最後の直接対決も制し今季初の単独首位。その2日後、143試合目で歓喜のゴールに飛び込んだ。

 あくまで最終目標は6年ぶりの日本一。昨季は中日に惨敗したCS、その先にはパ・リーグ覇者との頂上対決が待っている。「今年は選手の強さに僕が引っ張られることもあった。ジャイアンツとしての大きな力で戦える」。補強と育成の融合、それを引き出した信念の采配。原巨人は“真の巨大戦力”となった。


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