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2008/01/06(日)
HD DVDに致命的な打撃? 米ワーナー、ブルーレイ支持を発表
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米ワーナー・ブラザースは、08年末、社を挙げてブルーレイを支持することを発表。この決定は、ブルーレイのライバルであるHD DVDにとって致命的な打撃となるだろう。
ホリデー・シーズンの後に、片方のフォーマットへの支持を止める意志を見せていたワーナー。同社はハイビジョン戦争によって起きている混乱を落ち着かせるため、そしてさらなる消費者を得るために、ブルーレイへの支持を決断したと発表した。ワーナーはこの決定を、今月7日(月)からラスベガスで開されるコンスーマー・エレクトロニクス・ショーに先駆けて発表した。
ワーナー幹部は、ブルーレイの国内及び海外セールスが転換期にあると見た。ソニーが開発したブルーレイは、はじめからスタジオの大きな支援と、ハイビジョン映画を再生できるゲーム機プレイステーション3のおかげで、HD DVDよりやや有利なスタートを切った。
ワーナーのこの決定により、HD DVDを支持するスタジオは、米パラマウント・ピクチャーズと米ユニバーサル・ピクチャーズの2社のみとなった。
米ソニー・ピクチャーズ、米20世紀Fox、米ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、そしてライオンズゲートは、全てブルーレイ支持だ。ワーナーの姉妹会社であるニューライン・シネマも、ブルーレイに転向することを認めている。
07年夏からワーナーは、両フォーマットを支持する唯一の大手スタジオとなった。同じように両フォーマットを支持していたパラマウントは昨夏、HD DVD支持に一本化。東芝から差し出されたマーケット・インセンティブと、低価格なHD DVDの方がより多くの消費者の支持を得ると信じたからだ。
しかし、両ハードウェア・メーカーは、ホリデー・シーズン中にかなりの値引きを実施し、2つのフォーマット間にあった価格差を縮めた。スタジオも、ソフトウェア面で宣伝を後押し。
それでもワーナーは、消費者は未だにハイビジョンという分野に踏み込もうとはしていないと言う。原因は両フォーマットが起こしている混乱だ。 「価格による障害はなくなりましたが、その後、それほど大きく巻き返しているわけではありません」と話したのは、米ワーナー・ホーム・エンタテインメントの上層部、ケヴィン・ツジハラ氏。「リサーチでは、消費者の間では未だに大きな混乱があるようです」。
両フォーマットを支援するということは、2つのフォーマット用の製品を生産しなくてはならず、スタジオには余分なコストが発生する。スタジオ側も、両フォーマットで売り出したハイビジョン製品でヒットが出ても、それが消費者の、両次世代フォーマットへの移行を助けているのか、はたまた混乱を助長させているのかわからなくなり始めていた。
「両フォーマットを支持することで、我々は消費者を混乱に陥れているのかも」とツジハラ氏。ワーナー・ブラザースの会長兼CEOであるバリー・メイヤー氏も「HD TVの初期購入者は、ハイビジョン・プレーヤーを同時に買うチャンスがありました。ハイビジョンDVDを購入する機会は、フォーマット戦争による消費者混乱が長引けばなくなってしまいます」と加えている。だが、スタジオは嵩むコストが転換の理由になったわけではないと主張する。パラマウントはHD DVDを支持するためのインセンティブを東芝から受けるに当たって、様々な批判を浴びた。ツジハラ氏は「これは買収合戦ではありません」と言う。
ツジハラ氏によれば、世界のDVDビジネスは、年商420億ドルで、彼のスタジオは同マーケットのシェア・リーダーとして活躍してきたと言う。「この額は、いかなる経済的インセンティブでさえ小さく見せます」。
確かに、パラマウントはHD DVDへの支持を保持しているが、それはHD DVDが平均的に低価格で、そのため消費者から受け入れられるチャンスが大きいというのが理由だ。
ワーナーがブルーレイに転向することは、少し前からささやかれていた。しかしスタジオは、どちらか一方のフォーマットを支持する前に、決め手となるホリデー・シーズンのセールスで両フォーマットがどう飛躍するかを見極めたいとしていた。
実際、第4期の終わりに、ワーナーはHD DVDの利点を片面に、ブルーレイの利点をもう片面に書いた大きな新聞広告を出した。この時点で、ホームビデオ部門の上層部であるロン・サンダース氏は、フォーマット戦争や消費者に利点を訴えるだけの闘いから、前進しなくてはならないと訴えていた(米バラエティ、12月17日〜23日号)。
サンダース氏は、スタジオはHD DVDを支持してきた建前、同フォーマットを3月31日まで生産するだろうと言う。その後ハイビジョン面だけで、ブルーレイに移行する。レンタルビデオのチェーン店であるブロックバスターも昨年夏に、同じようにHD DVDを徐々に棚からなくしていった。
スタジオと制作会社は、ハイビジョンを巡って長期間争ってきた。なぜなら、多くの未来がこれにかかっているからだ。標準DVDのセールスは低下し始め、今の時点ではデジタル・ダウンロードは、ハイビジョンより消費が少ない。DVDセールスはスタジオに年160億ドルを稼ぎ出し、これに80億ドルのレンタル部門での成績が加わってくる。
ワーナーがブルーレイを支持するという決断は、ハイビジョン戦略の第3回目のシフトチェンジを表している。当初、スタジオはHD DVDを支持すると言った。その後、初めてハイビジョン・ディスクが店頭に並ぶ数カ月前の05年10月に、両フォーマットを支持すると意志を変えた(デイリー・バラエティ 05年10月20日号)。パラマウントも、昨年夏にHD DVDに落ち着くまで同じような動きを見せていた(デイリー・バラエティ 8月21日)。この決断は、今年一年は続くと見られている。
ワーナーのブルーレイへの転向は、HD DVDの未来を決着づけることを早めると見られている。ブルーレイの勝利は、ソニーのベータマックスがビデオカセット戦争でVHSに負けて以来、待ち焦がれていたものだ。
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