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2007/11/17(土)
連続児童殺害 鈴香被告 「極刑望む」も核心は闇
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■「殺意」めぐり激しい応酬
秋田連続児童殺害事件で、殺人と死体遺棄の罪に問われた無職、畠山鈴香被告(34)の被告人質問が、先月末から今月にかけ計4回にわたって集中的に行われた。自身の不幸な生い立ちなどについては饒舌(じょうぜつ)だったが、核心部分では口を閉ざし、検事に逆ギレする場面もあった。わが子と隣人の子を葬った希代の“鬼母”は「極刑を望む」としながらも、いまだ真実を吐露していないようにみえる。(酒井孝太郎)
公判での最大の争点は、長女の彩香ちゃん=当時(9)=に対する「殺意」だ。
昨年4月9日。彩香ちゃんが川をさかのぼる魚が見たいとせがんだため、日が暮れたにもかかわらず、被告は自宅から車で10分ほどの「大沢橋」に連れて行った。
検察側の主張はこうだ。被告はもともと子供に生理的な嫌悪感を抱いており、彩香ちゃんを邪魔だと感じていた。この日はイラ立ちや嫌悪の念が極限に達し、「橋の上に乗れば? 乗らねば帰るよ」ときつい口調で命令。おびえながら従おうとする彩香ちゃんの尻を持ち上げて欄干の上に乗せ、両足を外側に出した形で座らせ肩の付近を左手で力いっぱい押した。
「お母さん−」。彩香ちゃんは叫び声を上げながら真っ逆さまに川へ落下し、窒息死した。
≪「過失」を強調≫
対する被告の主張は、「乗らねば帰るよ」の言葉の後が異なる。
予想に反して彩香ちゃんが欄干に上ってしまい、両足を投げ出して座った。その後、彩香ちゃんは「お母さん、怖い」と言って体を左側にねじり、被告に抱き付こうとした。瞬間、被告は左手で払いのけてしまった−というのだ。
被告人質問では、弁護側が「過失」を強調すべく被告にこう語らせた。
「自分で汗がかけないので、汗かきの彩香が急に迫ってくる感じがちょっと怖かった」「(彩香ちゃんが向かってくることは)予想していなかった」
ただ、弁護側の「ストーリー」にはなじまない言葉を、鈴香被告は法廷で述べている。「イライラして『ここ(欄干)さ上って背を押しつけてやればどうなるべ』と一瞬考えた」。この供述からは、常識的な感覚で「殺意」がうかがわれるとみるのが妥当で、「過失」とは相いれない。
検察側は供述に飛びついたが、被告は「実際にしようとは思ってなかった」と釈明。さらに「乗らねば帰るよ」の文言をとらえ、「帰らせようというよりは、上らせようとしているように聞こえるけど?」などと一気に攻め込んだ。
ここは、彩香ちゃん殺害の審理のまさに核心部分だ。だが被告は「覚えていない」を連発した。
≪数々の“軽口”≫
被告は取り調べ段階で「殺意」を認める調書にサインしていることから、「自白の任意性」についても激しい応酬があった。
弁護側は、厳しい取り調べの実態を被告に語らせた。刑事に言われたのは、こんな言葉だったという。「思いつき、妄想、うそつき」「テレビに出て女優気取りか」。
検察の調べでも、怒鳴られたり遺体の写真を見せられ「怖かった」と被告は証言。検事に「『とっさに(彩香ちゃんを)押した』という言葉を強調してあげる」と言われ、情状をよくしようという気持ちから調書にサインした−と供述した。
検察側は猛反発。被告の証言を覆すエピソードを次々とぶつけては黙秘させ、「自己弁護」の意識や「虚言癖」があることを法廷に印象付けた。
また、被告が周囲に口にした「軽い言葉」の数々を明かした。例えば「検事さんのネクタイが4日間も同じで、笑いをこらえるのに必死だった」「検事さんに『眠いでしょ』と聞かれて、やべーと思った」…。さらに、「そもそも遺体の写真を見たがったのはあなただ」と被告に迫り、「猟奇性」をも浮かび上がらせた。
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