|
2006/07/28(金)
飲酒死亡事故 加害者の同僚にも5800万円支払い命令
|
|
|
飲酒運転の車にひき逃げされ死亡した女子大生(当時19歳)の遺族が、加害者側に計約8100万円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は28日、運転者の男性(37)と勤務先の会社に加え、直前まで一緒に酒を飲んでいた同僚(33)にも連帯して計約5800万円を支払うよう命じた。同僚は事故車に同乗していなかったが、佐久間邦夫裁判長は「男性が事故を起こすような危険な飲酒運転をすることを手助けした責任がある」と厳しく指摘した。 訴えていたのは、埼玉県坂戸市の正林(まさばやし)幸絵さんの父俊幸さん(57)、母信子さん(56)と兄2人。 事故は01年12月29日未明、同市の市道で発生。飲酒した元会社員の男性=危険運転致死傷罪などで懲役7年が確定=運転の車に、幸絵さんと女子短大生(当時20歳)がはねられて死亡。別の男子大学生もけがを負った。男性はそのまま逃走した。 判決によると、男性と同僚は前日午後7時半から約6時間半、居酒屋など3軒で酒を飲み、29日午前2時前に駐車場で解散。男性はこの後、1人で会社のワゴン車を運転して帰宅する途中に事故を起こした。 同僚側は訴訟で「男性の方が年長で、意見できなかった」と反論。佐久間裁判長は「駐車場での男性の様子から、かなり酔っているが車で帰ることを同僚は予想できた。正常な運転が困難な状態まで長時間一緒に酒を飲んだ者は、運転を制止すべき注意義務がある」と判断した。 遺族側は、男性の妻(39)にも「日ごろから男性の飲酒運転を知っていたのだから、事故の日もやめさせるべきだった」と賠償を求めたが、判決は「男性は会社帰りに酒を飲んでいて、妻には事故を避ける直接的、現実的な方法がなかった」と退けた。
◇飲酒運転を止めなかったことが理由、妻は除外 飲酒運転事故を巡る民事訴訟では、一緒に酒を飲み事故車に同乗していた者に賠償を命じた判例はある。今回の東京地裁判決について遺族側の佐々木惣一弁護士は「事故現場にはいなくても、飲酒運転を止めなかったことを理由に賠償を命じた点は画期的」と語った。 判決は、男性の有罪が確定した危険運転致死傷罪が飲酒運転の罰則を強化した規定であることに触れて「運転者への厳罰は当然として、飲酒をすすめた者にも、飲酒運転をやめさせる義務を怠った場合は民事上の責任がある」と指摘。別れ際の同僚の行動について「早く帰って休みたかったばかりに、自らタクシーや代行運転を呼ぶことなく、男性を駐車場に残して帰宅した」と非難した。 飲酒運転の悪質性を重くみて周囲の人間にも制止すべき責任を負わせた判決は、飲酒運転が許されない反社会的行為であると、改めて警鐘を鳴らしたといえる。 だが、男性の妻への請求を退けた点には、遺族は必ずしも納得していない。判決後に会見した父俊幸さんは「この判決が広まれば少しは飲酒運転が減るのではないか」と期待しつつも「妻への請求が認められなかったのは残念」と話した。事故時に幸絵さんが履いていたジーンズを身につけた母信子さん(56)も「妻が迎えに行けば事故は防げた」と時折涙ぐみながら厳しい口調で語り、控訴する考えを示した。
|
|
|
|