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2006/07/31(月)
<プール事故>危険な状態をなぜ放置…怒りの声が噴出
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夏休みのプールで悲惨な事故が起きた。埼玉県ふじみ野市の同市営ふじみ野市大井プールで31日、同県所沢市山口、同市立小手指小2年、戸丸瑛梨香ちゃん(7)が大勢の人の前で排水口にのみ込まれ、死亡した。「普段から排水口の吸引力はすごかった」と利用客は口をそろえる。なぜ、ふたが外れた危険な状態が放置されていたのか。関係者からは怒りの声が噴出した。
「吸い込まれる瞬間、ドーンと大きな音がした」。事故が起きた後、施設の外に誘導された利用客たちは声を震わせた。毎日のようにプールに来ているという川越市の中学1年、斉田朋也さん(12)は「排水口の近くはすごい力で引っ張られ、壁に体がくっつきそうになる。ふたが外れていたなんて怖い」と言葉を詰まらせた。 この日、プールは約230人の客でにぎわっていた。市の説明によると、排水口のふたが外れていることにプールの責任者が気付いたのは午後1時半ごろ。ふたを緊急補修するため監視員が道具を取りに行き、その間、別の監視員が「(排水口の)さくがないから、そばに寄らないで」と呼びかけていたという。しかし、客にプールから出るように指示はしなかった。事故はその直後に起きた。 ふじみ野市の無職男性(29)は「営業日は、利用者に1時間ごとに休憩を取らせ、監視員が設備点検をしていた。何を確認していたのか」と憤る。プール設備の補修・点検を行う県内の業者は「ふたが外れた時点でポンプを止めていれば、事故は防げたかもしれない」と指摘する。 瑛梨香ちゃんを救出するためプールの外壁を破壊する作業は難航した。作業員の1人は「パイプの奥に(女児の)姿は見えるんだが……」と悔しがった。事故から約6時間後、瑛梨香ちゃんの体は外に出たが、すでに心肺停止状態だった。 市は夜になって記者会見を開いたが、営業を中止しなかった判断については「当時の詳しい状況が分からない」と繰り返した。島田行雄市長は「本当に大変なことを起こしてしまった。心からおわび申し上げたい」と何度も頭を下げた。 ◇「バタ足の練習程度だったらしい…」沈痛な表情 瑛梨香ちゃんの通っていた埼玉県所沢市の市立小手指小では、同市教委の担当者が対応に追われた。 藤田晃・教育企画室長は「瑛梨香ちゃんはクラスの中でも明るく素直な子だったと聞いている」と話した。泳ぎは得意だったのかとの質問には「上手下手とかのレベルでなく、バタ足の練習程度だったらしい。まだ小学2年生だ……」と沈痛な表情を見せた。 また、瑛梨香ちゃんが以前通っていた幼稚園の園長は「表情が明るく活発で、面倒見のよいお姉さん的な子だったのに」と言葉を詰まらせた。
■プールで起きた最近の主な水死事故■ 99年7月 山形県藤島町(現鶴岡市)の町立小学校で、6年生の女児(11)が排水口にひざを吸い込まれ水死。排水口のふたは以前から付いてなかった。 8月 栃木県葛生町(現佐野市)の町営プールで、高校1年生の男子生徒(15)が排水口のふたを開けて遊んでいるうちに、両足を吸い込まれ水死。 04年7月 新潟県横越町(現新潟市)の町民プールで、小学6年生の男児(12)が排水口に足を吸い込まれて水死。排水口のふたは固定されていなかった。 8月 福井県鯖江市の市民プールで、小学1年生の男児(6)が遊泳中に水死 05年4月 福岡県大牟田市のスイミングスクールで、男児(3)が練習中に水死 8月 埼玉県東松山市の市立小学校で、5年生の男児(11)が水泳指導中に水死 〃 熊本県益城町の保養施設で、幼稚園女児(5)が遊泳中に水死 06年2月 秋田県男鹿市の県立高校屋内潜水プールで1年生の男子生徒(16)が水死 (年齢は当時)
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