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2006/04/13(木)
桑田のために巨人圧勝!600日ぶり1勝
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背水のプロ21年目を迎えた巨人桑田真澄投手(38)が、600日ぶりの1勝を挙げた。広島戦で今季2度目の先発マウンドに立ち、5回4安打1失点。絶妙の制球で、04年8月21日広島戦以来の勝利投手となった。エースナンバー18の“復活”を後押ししようと、矢野謙次外野手(25)が3二塁打で3打点を上げるなど計17安打で9点を奪い圧勝。2年ぶりの5連勝で、セ・リーグ10勝一番のりを果たした。ベテランと若手がかみ合う原巨人は、強い。 正々堂々、真っすぐで押した。桑田は変化球を見せ球に、広島打線の裏をかいた。「ブルペンから真っすぐが良かった。慎之助もそれを中心に考えてくれた。以心伝心、心の中で会話ができた」。外角低めの判定がやや甘いと見るや、執ようにボールを集めた。プレートから打席、18・44メートルの空間を、絶妙の制球力で自在に操った。 何とかして、勝ちたい。4回。自ら放った二ゴロで全力疾走、ベースで右足をくじいた。痛みをこらえ5回は3者凡退。この日最速の138キロは意地だった。試合後、足を引き右翼席に歩いた。声援に応えベンチ裏に戻ると、173個目のウイニングボールを右手に、しみじみと語った。 桑田 長かった。今まで簡単に「勝って」きたけど、「勝たせてもらった」という言葉が当てはまるんだと思う。行く先々でみんなに温かい言葉をもらって、生かされてもらっているんだ、と実感できた600日だった。 チームは試合前「何とか桑田さんを勝たせよう」と円陣を組んだ。仲間の力強い援護が、身に染みてうれしかった。 白星から見放された、2年近くの日々。特に今年は長かった。オープン戦序盤から好調を持続、3月18日の故・藤田元司元監督(享年74)の追悼試合に先発予定だった。しかし、体調不良で当日の登板回避。数日後、鼻声で神宮球場の監督室を訪れ、わびた。 かつて選手としてともに戦った指揮官は、桑田にきつい言葉を浴びせた。「このままで、お前の先発はない。抑える、抑えないは仕方がない。舞台に立てないような体の状態にはするな」。昨年は未勝利。実力至上主義を掲げる中で、1つのミスも許されなかった。オープン戦最終戦で何とか結果を出し、ローテ最後の1枠に滑り込んだ。 犯した失態を取り戻そうと、必死だった。桑田は開幕戦の朝、球場入りする前にジャイアンツ球場を訪れた。誰もいない室内練習場で、汗を流した。原監督は試合後「真澄に、残された部分は勝ち星だぞ、と言った。本人も『分かっています』と話していた。今日は本来の真っすぐだった」と評価した。心を鬼にし、一度は突き放した。真の愛情は報われた。 優勝したかのような歓声と、うわずる声。お立ち台の声は、途中からほとんど聞こえなかった。「この1勝、藤田さんの目の前で見せられれば良かったんですが…」。少しだけ間に合わなかったのが、心残りだ。受け継いだ巨人軍の「18」を背負う意味を何度も話してもらい、仲人も務めてもらった生涯の恩師。ウイニングボールは、墓前に届けることに決めた。
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