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2006/02/08(水) 耐震偽装拡大の恐れ 福岡・熊本で「非姉歯」物件
耐震強度偽装事件で国土交通省は八日、姉歯秀次元建築士(48)とは別に、福岡の設計会社が木村建設(熊本、破産)施工の賃貸マンション三件について構造計算書を偽造していた疑いがあると発表した。「姉歯」以外で偽装が判明したのは初めて。設計会社側は偽装を否定している。同設計会社は過去に一万件以上の構造計算を行ったとしており、国交省で追跡調査と刑事告発を検討するが、新たな偽装がさらに拡大する恐れがある。
 さらに熊本ではマンションやビジネスホテル六件の木村物件の耐震強度不足が発覚、震度5強程度の地震で倒壊する恐れがあることが分かった。いずれも「姉歯」以外の熊本の設計会社が構造計算をしていた。熊本県は六件の計算書が偽造されたとは断定していないが、調査を続ける。
 「姉歯」以外からも偽装が発覚したことで、建築にかかわる偽装が広く横行する実態が浮かび、日本の建築の信頼性を揺さぶる事態となった。
 国交省によると、偽装の疑いがあるのは福岡県春日市にあった設計会社「サムシング」(社長=仲盛昭二・一級建築士、平成十四年廃業)。
 国交省は都府県を通じ、偽装事件に関連した木村建設、平成設計、ヒューザー、総合経営研究所が関与した物件を実態調査。福岡市が日本建築構造技術者協会(JSCA)に調査依頼した結果、偽装が判明した。
 三件は九階建て二件と八階建てで、十二、十三年に建築確認。JSCAによると、(1)建物の重さを本来の9−16%少ない数値で構造計算した(2)計算に連続性がない−などの不審点が見つかり、二件の耐震強度は基準の85%、90%で、一件は基準を満たす100%以上。国交省は「緊急に安全性が問題になる状況ではない」としている。
 これとは別に、建築確認の関連書類が保存されていない他の一件について竣工図を元に再計算したところ、強度が90%程度で、基準を満たしていない柱や梁(はり)があったことが分かった。
 計四件はいずれも木村建設が元請け、下請けとして施工した。福岡県は八日、仲盛元社長が現在勤める設計事務所を立ち入り調査。同元社長は聴取に「意匠の設計変更を受け、最初からやり直さず計算したため連続性がなくなった。偽装はしていない」と主張した。
 サムシングは過去に一万件以上の物件にかかわっており、国交省は関係自治体とともに物件を洗い出し、偽装の有無や強度確認を進める。
 熊本の強度不足六件も、再検査したJSCAから指摘されたものだった。このうち熊本市内のマンションは強度が基準の43−45%、大津町の賃貸マンションも45%しかなかった。いずれも木村建設物件で、姉歯元建築士やサムシングは関与していない。熊本県によると、JSCAは「構造計算書に偽造は見受けられないが、耐震性に疑義がある」と指摘しているという。
     ◇
≪底見えぬ…不信増幅≫
 姉歯元建築士以外の偽装が判明したことで、偽装事件は「姉歯事件」から広く一般的な問題に拡大した。建築物の耐震性を支える構造計算書の偽造という行為が「氷山の一角」だったことが突き付けられ、国交省は衝撃を受けている。
 「姉歯事件」を受け、国交省は事件に関連する木村建設や平成設計、ヒューザー、総合経営研究所が過去に手掛けた物件をすべて洗い出し、関係自治体を通じて偽装の有無を調査していた。
 四社が手掛け、書類などが完備する状態の物件は八百十四。このうち姉歯元建築士が構造計算にかかわったのは二百七件、「非姉歯物件」は六百七件(木村建設四百五件、ヒューザー六十三件、平成設計二十四件、総研百十五件)。
 「姉歯物件」のうち偽装が判明したのは九十七件、偽装なしや建設中止が確認されたのは百八件。調査は二件を残すのみだ。
 並行した「非姉歯物件」調査は、木村二百八十二件▽ヒューザー二十一件▽平成十六件▽総研六十一件−まで検証が進み、このほか建設中止などが七件あったことから、全六百七件のうち六割以上の三百八十七件で偽装がないことが確認された。ここまで偽装が判明しなかったことで、「このまま順調に調査が終われば姉歯元建築士の『個人犯罪』として区切りがつくはずだった」(国交省幹部)が、サムシングの偽装発覚で「底が見えなくなってしまった」(同)。
 「深刻に受け止めている」。国交省の山本繁太郎住宅局長は八日、「偽装なしとの報告を願っていたが、非常に残念」と語った。
 「東横イン」の不正改造問題とあわせ、建築不信にさらされる同省。「サムシング物件」の洗い出しを始めるが、同社は既に廃業しており追跡調査は困難なものになりそうで、建築不信は容易におさまりそうにない。


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