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2006/02/16(木)
スピードスケート 泣く大津を仲間が笑顔で抱きしめる
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一瞬の出来事が、夢を遠のかせた−−。16日、トリノ冬季五輪・スピードスケート団体追い抜き女子3位決定戦。大津広美選手(21)が転倒し、ロシアに敗退した。泣きじゃくる大津選手を、チームメートらは笑顔で抱きしめ、慰めた。 ゴールまで残り約900メートル。日本がわずかにリードして迎えた1500メートル地点のカーブだった。3人一組、縦1列で滑る競技で、先頭からチームの最後尾に位置を替えようとした大津選手の体がグラッと傾いた。バランスを取り戻そうとするが間に合わない。尻もちをついて倒れ、あおむけでサイドのマットに打ち付けられた。氷上で、大粒の涙が大津選手の目からあふれた。 レースは序盤から日本がリード。ロシアが徐々に追い上げて接戦になった。だが、リードしていたことすら知らずに、必死で滑っていた大津選手は交代のことで、「焦ったんだと思う。もしかしたら、あそこ(表彰台)に立てたかもしれない……。自分の責任です」と唇をかんだ。 ライバルが相次いで転倒する幸運に恵まれて4強入りを果たした日本も、最後の最後で転倒に泣いた。団体追い抜きはトリノ五輪で初めて実施された新種目で、先頭交代の仕方にはまだ慣れない選手が多い。若さが出たレースだった。 だが、日本がメダルを争う戦いができたのは、大津選手の力によるところが大きい。今季前半戦のワールドカップ(W杯)で不振だった主力選手の穴を埋め、五輪出場枠をもたらした立役者だ。 今大会でも予選から4レース中3レースに起用され、コーチ陣や、同僚から厚い信頼を得ていた。頑張りを知るチームメートはリンク内で大津選手を囲み、肩を抱いて慰めた。大津選手と交代して控えに回った根本奈美選手(30)は「大津が転ばなくても、誰かが転んだかもしれないんだから」と五輪初代表の後輩をいたわった。 まだ、大津選手には22日の1500メートルがある。レース後、仲間に励まされ落ち着きを取り戻した大津選手に、もう涙はなかった。「4年後もある。ここまで来られて自信になった」と前を向いた。
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