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2005/07/03(日)
長嶋茂雄元監督 ナイター観戦 1年4カ月ぶり公の場に
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ミスタースマイルが、ファンの前に帰ってきた。昨年3月4日に脳梗塞(こうそく)で倒れた長嶋茂雄氏(69=巨人終身名誉監督)が3日、東京ドームで巨人−広島9回戦を観戦した。同氏が公の場に姿を現すのは、倒れる2日前に「燦燦(さんさん)会」に出席して以来488日ぶり。右手にまひは残るが、以前と変わらぬ笑顔でこたえた。試合は巨人が敗れ、自身は今後も厳しいリハビリテーションが続くが「球場は気持ちいい。勇気をもらった」とコメント、また訪れると約束した。 懐かしい野球場のにおいがした。これをかぎたかった。野球人・長嶋茂雄が、ついに東京ドームに戻ってきた。試合開始4分前の午後4時56分、場内アナウンスとともにバックネット裏、中2階のバルコニー席に長男一茂氏、主治医の東京女子医大・内山真一郎教授とともに姿を見せた。淡いシルバーのスーツにネクタイ姿。ダンディな姿は、紛れもないミスターだった。昨年3月2日の燦燦会以来のスマイル。まひが残る右手はポケットに入れたままだが、だれに支えられることなく、ゆっくりと1人で歩いた。 今季一番の歓声が、地鳴りのようにわき起こると、にこやかにうなずきながら、ペコリと頭を下げ、左手を何度も振った。1度座ったが、鳴りやまない歓声に再び立ち上がりもした。グラウンドでは高橋由が、清原が、桑田が、先発全員が守備につく前に一礼していく。そのたびに「頑張れよ」と左手を上げた。ライトスタンドには「お帰りなさい 長嶋さん」の横断幕。球場全体に迎えられた。 「グラウンドのにおいがかげて気持ちよかった」。試合中、隣で観戦した一茂氏にもらした。休憩のため3回裏で1度席を立ち、5回の裏から再びバルコニー席に出てきた。それ以外は生でグラウンドの白球を追った。清原のフルスイングには思わず身を乗り出し、二岡、高橋由の体を張ったファインプレーには、左ももをたたいてたたえた。試合終了後の混乱を避けるため、8回が終わると退席。その時点で3点のビハインドだったが、満足そうだった。 長嶋氏「久しぶりに東京ドームに来て、やっぱり野球場はいいなと思いました。ファンの皆さまの声援や選手のプレーに勇気づけられました。またドームに来てファンの皆さまと一緒に応援したいと思います」。 まさに驚異的な回復力だった。脳梗塞(こうそく)に突然倒れたのが昨年3月4日。予断を許さないほど重かった。それから続いた長く、苦しい入院、そしてリハビリの日々。「思うようにいかないものがあって、もどかしいところがあったと思う」と一茂氏は振り返る。言葉、動作が思うようにいかない。ふつうの人なら音を上げるような厳しいメニューを1日3〜4時間かけてこなしていった。50音のうち1文字を見せて連想ゲームを行うリハビリでは、「ほ」から「星」を連想し、間髪入れず「スター」と答えたという。長嶋氏らしさが、表れてきた。 ただ、一茂氏は「まだまだ完全な体調にはほど遠い」といい、今回の観戦で「眠っていた神経が起きてくれればいいなと思う」と期待した。 試合は、広島に完敗した。しかし観戦中、長嶋氏は内山教授や一茂氏に何度も繰り返したという。「あきらめるのは早すぎる。野球は何が起こるか分からない。あきらめずに頑張ってほしい」。それは病からはい上がり、見事に復帰した自らに照らし合わせているかのようでもあった。
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