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2005/06/15(水)
イチロー、メジャー通算1000本安打を達成
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マリナーズ・イチロー外野手(31)が、日本人選手初のメジャー通算1000本安打を達成した。「あと1本」で迎えたフィリーズ戦の第1打席に、右翼フェンス直撃の安打。通算696試合目での大台到達は、1900年以降では、史上3番目のスピードとなった。昨年マークした年間最多記録262安打に続く「安打製造機」らしい勲章だが、不振が続く中での金字塔に、複雑な心境も吐露していた。 一塁ベース上に立ったイチローは、しばし考えた末に、地元シアトルのファンのスタンディングオベーションに応えることを自粛した。苦しみの中での1000本到達。昨年、年間257安打の年間安打記録を更新した際、帽子を掲げた当時とは心境が違った。 イチロー「あそこは戦いがありましたね。応えるべきかどうか。今の成績ではやるべきではないと判断しました。そういう気持ちの葛藤(かっとう)がありました。する勇気が出ないというか」。 開幕直後、好スタートを切りながら、5月以降ペースダウン。打率も3割を切る「異常事態」に陥った。1回裏の第1打席。心に沈殿したモヤモヤを振り払うようなシャープなスイングで、右翼フェンスへライナーでぶつけた。 イチロー「ずいぶんと予定というか、イメージよりも遅くなってストレスがたまってましたし、なかなかスッキリした感じではなかったですね。日本で1000本打った時に、安打を重ねるたびに難しくなると言ったんですが、こちらでもやっぱり変わらない。簡単になることはないな、って感じました」。 昨年、年間安打の新記録を達成し、もはや「極意」をつかんだかと思われた。日本だけでなく、米国内でも「もっとも4割に近い打者」として話題を集める存在になった。その期待に応えるように、今季キャンプ初日で、ベスト体重(76キロ)に絞り込めたほど、ほぼ完ぺきな状態で5年目に臨んだ。だが、誰もが予期しない低調期に襲われた。どんなに高い技術をもってしても、微妙な精神状態をもコントロールすることは、イチローでさえ容易ではなかった。 イチロー「長くやっていると、立場が変わってくるし、もらってる給料も変わってきますしね。楽にさせてくれないですよね」。 ただ、イチローにとって1000安打の陰にある倍以上の凡打の悔しさが、自らの糧(かて)になっていることに変わりはない。 イチロー「倍ぐらいの失敗を重ねないと生まれない。それが打撃ですから。そうやって奥深いものになってくれればいいですね。失敗を繰り返すことが」。 残り100試合。ひとまず区切りの数字は超えた。その一方で、5年連続200安打をはじめ、周囲からの期待の声は後を絶たない。これまで印象に残る安打を聞かれ、オリックス時代に「ワンバウンドの球を打った安打」を挙げたイチロー。「あとは2バウンドの球を打ちたいですね」。ジョーク交じりに漏らした声から、ここ数週間の重苦しさは消えうせていた。
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