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2005/03/15(火)
東武伊勢崎線・竹ノ塚駅踏切 遮断機上がり2人死亡 手動操作、係員誤る
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十五日午後四時五十分ごろ、東京都足立区西竹の塚の東武伊勢崎線竹ノ塚駅そばの37号踏切で、踏切内にいた女性二人が太田発浅草行きの上り準急列車(六両編成)に次々とはねられ、二人は病院に運ばれたが死亡した。踏切周辺にいた女性二人も軽傷。踏切は係員が手動で遮断機の上げ下げを行っており、事故当時、遮断機は上がっていた。警視庁捜査一課と竹の塚署は係員が誤って遮断機を上げたと話しており、業務上過失致死傷容疑で捜査している。現場は「開かずの踏切」として有名だった。 調べでは、死亡したのは同区内に住む保険外交員、宮崎季萍(きへい)さん(38)と主婦、高橋俊枝さん(75)。けがをしたのは、近くに立っていた女性(55)と自転車に乗っていた女性(44)で、足や頭に軽傷。自転車の女性は後部に女児(5つ)を乗せていたが、女児にけがはなかった。 事故当時、踏切を上下線の普通列車が同時に通過し、その後、上りの準急、さらに下りの準急と続く予定で遮断機を上げるのは困難のはずだったが、二本の普通列車の通過後、遮断機が上がったという。踏切には電車の接近をランプで知らせる「連動盤」という機械があり、当時も正常に作動。係員は連動盤と踏切の状況を見ながら遮断機を上下させていた。 遮断機を動かしていた竹ノ塚駅の踏切保安係員(52)は警視庁の事情聴取に対し「上りの準急を忘れて下りの準急まで一分以上あると思い、遮断機を上げてしまった」と誤りを認めているという。 現場は竹ノ塚駅から約四十メートル。はねた電車は竹ノ塚駅には停車しないため、踏切内でも減速せず、時速九十キロで走行していた。運転士は踏切内に人が立ち入ったのを発見、急ブレーキをかけたが間に合わなかった。東武鉄道によると、この踏切は「第一種乙」と呼ばれる手動式。踏切の長さが三十三メートルあり、歩行者が取り残される恐れがあるため、近くの作業小屋で係員がハンドルを回し、遮断機を上げ下げしていた。 事故を起こした保安係員は十八年の経験を持つベテラン。平成十五年三月から現在の踏切で勤務しており、これまで勤務態度に問題はなかったという。前日は休日で、この日は午後二時四十分から翌午前一時十分までの勤務だった。 ◇ ≪「まさか本当に犠牲者が」≫ 一瞬の出来事だった。死亡した女性の反対側から歩いてきた男子中学生(14)は「十人くらいが踏切待ちしていた。遮断ロープが二、三メートル上がったので渡ろうとしたが、自分は電車のライトが見えたので止まった。だが、上がってすぐに渡ろうとした女性がひかれた」。別の男子中学生(14)も「亡くなった女の人は話しながら歩いていたようだったので電車に気づかなかったのかも」と話した。 また、事故直後を目撃した会社員(36)は「通行人が『何で(遮断ロープを)上げたんだ』と保安係に詰め寄っていた」と興奮気味に話した。 近くの女性は「東武は犠牲者が出ないと動かないと住民同士で話していた。まさか本当に犠牲者が出るなんて」と怒りをぶつけた。 渋滞緩和のため少しでも多くの人と車を通そうと、同社では保安係員が手動で遮断ロープを上げ下げしていたが、「保安係員によってはぎりぎりまで人を通そうとして遮断ロープを下げない人もいた」(会社員)という。 ◇ ≪「安全上のため」 東武、有人方式裏目≫ 東武鉄道は十五日夜、東京都墨田区の本社で記者会見し、事故が起きた踏切が有人方式だった理由を「安全上のため」と説明した。保安係員は人為ミスを認めており、安全対策が裏目となる結果となった。 根津嘉澄社長は「誠に申し訳なく心からおわび申し上げます。再発防止策を立て安全輸送に努めて参ります」と述べ、深々と頭を下げた。 東武全線で千一カ所ある踏切のうち有人は三カ所だけ。現場の踏切が有人だった理由を、中谷和男取締役は「長さが三三・二メートルと長く、安全上、歩行者や故障車が取り残された場合に即応できるよう有人にしていた」と説明した。事故を起こした保安係員が人為ミスを認めていることに質問が及ぶと、角田建一常務は「詳細が分からずコメントできない」と繰り返した。 一方、現場は「開かずの踏切」として有名で、住民から立体化の要望が出ていた。しかし踏切に隣接して東京メトロ日比谷線の車庫があり、「車庫か竹ノ塚駅を動かさない限り立体化は難しい」(角田常務)という。国土交通省鉄道局などによると、遮断機と警報機を備える「第一種踏切」は昨年六月時点、全国で約三万カ所。うち手動式は七十六カ所で、いずれもブザーや警報で電車の接近を知らせ、保安係がハンドルなどで遮断機を操作するタイプという。
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