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2004/08/19(木)
北島、平泳ぎで2冠・柔道、上野も金
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日本競泳界のエース北島康介(21=日体大)が平泳ぎの史上最強スイマーになった。100メートルに続いて200メートルでも金メダルを獲得した。最初から1度もトップを譲らず、2分9秒44で圧勝した。五輪での平泳ぎの2種目制覇は男子では前回シドニー大会のフィオラバンティ(イタリア)に次ぎ2人目。世界選手権と同時2種目制覇の「4冠」は史上初の快挙となった。また、日本選手個人の五輪1大会で2つの金メダルは、ロサンゼルス五輪体操の具志堅幸司以来20年ぶりだ。 ほえることもない。叫ぶこともない。まるで勝つことが当然だったと言うように、北島は軽く右手の拳を握った。100メートルに続く2つ目の金メダルを、余裕たっぷりに手にした。「面白くなかったですか? 自分が冷静なのが分かった。周りをじっくり見る余裕もあった」。号泣した100メートルの会見と違って、どこまでも落ち着いていた。それでも2冠は快挙。「人生の中で一番ハッピー」と喜んだ。 スタートから終始リードを保つ横綱相撲だった。1ストロークが最高2・5メートルもある大きな泳ぎで、水を切り裂いていく。世界記録保持者ハンセン(米国)の追随を許さない。予選、準決勝1位で銀メダルの15歳ジュルタ(ハンガリー)に1秒36、1メートル以上の大差をつける圧勝だった。 予選は2位、準決勝は3位。だが、焦りはなかった。レース前のアップから、勝利を確信できるようないい泳ぎができた。「プレッシャーをかけられたけど、完ぺきな泳ぎができた」。ライバルたちとの争いを楽しむ余裕さえあった。 100メートルで金メダルを獲得した後、米国側から攻撃を受けた。「泳法違反疑惑」。50メートルのターン直後、禁止されているバタフライのようなドルフィンキックをしたというもの。米国男子背泳ぎ代表のピアソルが騒ぎ立てたことから始まった。米国の新聞、テレビが「ビッグ・スキャンダル」と詳しく報じた。 審判員からクレームはついてない。問題はない。米国チームは正式抗議こそしなかったが、ビデオを審判団に突き付けるなど行動を起こした。平井伯昌コーチ(41)は「あいつらは毎回やるんですよ。これも戦術。やはり五輪はある意味、国と国との武器のない戦争。あの手この手できますよ。悪いことをしてるわけじゃない。気にせずやりたい」と苦々しく話した。昨年の世界陸上の男子200メートル決勝で末続が、スタート前に両足スタートにクレームをつけられた。日本人、アジア人は世界からバッシングを受ける傾向にある。 だからこそ北島は、日本人としてのプライドにかけても負けるわけにはいかなかった。「そう言われたからには絶対負けられねぇ。逆にモチベーションを上げさせてもらった。これで何も文句は言われねぇだろ」。どこまでも冷静だった北島が、この時だけ東京・荒川区生まれらしいべらんめえ口調になった。米国の揺さぶり作戦にも動じることなく2つ目の金メダルを取ってみせた。 平泳ぎの五輪2種目制覇は史上2人目。世界選手権と同時2冠の「4冠」は史上初の快挙だ。すべてを成し遂げた男は次、何を目標にしていくのか。「五輪金メダルが最終目標じゃない。水泳選手である限り、毎年毎年、最高の泳ぎを見せられるようにしていきたい」。世界記録、4年後の北京。史上最強を証明したアテネから、北島の闘いがまた始まる。
柔道でも女子70キロ級の上野雅恵(三井住友海上)が金メダルに輝き、男子90キロ級の泉浩(明大)は銀メダル。競泳女子200メートルバタフライの中西悠子(近大職)は銅メダルを獲得した。 5日連続となった日本の金メダル数は、これで8個となった。柔道の一大会金メダル5個は史上最多。
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